第43章 執着は時として狂愛に
「おいクソガキ、テメェ中坊だろ?高校生の俺らにそんな生意気な態度とっていいと思ってんのか?」
「……………」
「年上は敬えって言葉知らねーの?」
「そっちこそ随分と道徳に反する行為を平気でしといて何が年上は敬えだ。それにキミ達を高校生とも思えないね。幼稚すぎてさ。」
今度はこっちが小馬鹿にするように笑えば、少年達の顔が更に苛立ちで歪む。
「あんまりナメた口利いてっと…テメェもその猫と一緒に"的"にすんぞ」
「つーか猫を助けてヒーロー気取りかよ!」
「"ヒーロー"?違うね。僕は…勇者だ。いいか?この子を傷付けることは僕が許さない」
白猫を腕の中で抱きしめる。するとカノトの勇者発言にポカンとした表情で呆けていた少年達だったが、ケラケラと笑い出す。
「ハハ!マジかよコイツ!」
「自分で勇者とか言う普通!?ウケんだけど!」
「頭ン中ファンタジーかよ!ダッセ!」
耳障りな笑い声が響く。だがカノトは少年達がどんなに嘲り笑っても、馬鹿にしても、一切表情を変えない。むしろ反省の色一つ見せない少年達に対して強い怒りが込み上げたていた。
「キミ達は…動物にも感情があるのを知ってるか?」
「は?」
ふと雰囲気を豹変させたカノト。先程とは違う大人びた顔、威圧のある鋭い声、嫌悪感と怒気を孕んだ冷たい眼。今カノトは、"26歳"の"宮村カノ"として、少年達に命の重さがどれほど尊いのかを教える必要があった。
「この子は生きてるんだよ。今、この瞬間、ここで生きてる。人間と同じでちゃんと感情だってあるんだ。酷い言葉を投げかけられたら悲しいし、乱暴に扱われたら痛みだって感じる。この子の命を勝手に弄ぶな。」
「っ…………」
「な、なんだよ…急にマジな顔しやがって」
「テメェに説教なんてされなくねえんだよ」
二人の少年はガラリと雰囲気を変えたカノトに戸惑い、狼狽える。だが、白猫の首根っこを掴んでいた少年だけは、年下に注意された事が気に食わないのか、苛立つ顔でカノトを睨みつけている。
「ソイツの命がどうなろうと俺らには関係ねーよ。死ぬんならとっとと死にやがれ。クソ猫一匹の命なんて大した事じゃねーだろ」
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