第43章 執着は時として狂愛に
「ッの、クソ猫が──ッッ!!!」
片手の隙間からギロッと鋭い眼光を覗かせた少年はブチ切れ、白猫を乱暴に地面に叩き付けた。
「に"ゃ……っ」
地面に叩き付けられた瞬間、体を打ち付けた白猫は痛そうに声を上げ、横たわったまま動けない。
「もう許さねーからな…。俺の鞄に泥まみれの足跡付けるわ、俺の顔にツメを立てるわ…マジでナメてんなコイツ」
「ちょうどイイじゃん!早くやろーぜ!」
「奢るのはお前ら二人のどっちかな♪」
「ざけんな。テメェが奢れよ。あ、当てる場所によって点数付けようぜ!体は3点、頭は5点、顔は10点な!」
「おし!狙うは顔!」
足元に落ちている小石を拾うと、少年達はニヤリと笑い、白猫を見た。なんとかして立ち上がって逃げようとするも、体に力が入らず、苦しそうな顔を浮かべる白猫は少年達を見て、そして消えそうな声で…
「……にゃあ」
と、助けを求めるように、鳴いた───。
「覚悟しろよクソ猫…!!」
少年が腕を振り被り、小石を白猫に投げつけようとしたその時───。
「ねぇ、何してんの。」
「!!」
白猫を守るように前に立ったカノトは、怒りを孕んだ冷たい瞳で少年達を睨みつける。
「あ?なんだテメェ?」
カノトの登場に少年達は驚いたものの、せっかくの"遊び"を邪魔された事に苛立ち、不服そうにカノトを見ている。
「退けよガキ。テメェがそこにいると、俺らがソイツで遊べねーだろ」
「これを遊びと認識しているなら、キミ達の頭の思考回路は随分と低レベルなんだな」
「なんだと?」
「猫いじめて楽しむとか…ダサいことしてんなよ、バカ高校生ども。」
「テメェ…!」
中学生にバカ呼ばわりされた上に説教までされた少年達はピキッと青筋を浮かべる。そんな少年達に冷ややかな視線を送ったカノトは後ろを向き、動けない白猫を抱き上げた。
「こんなに震えて可哀想に…。痛みで逃げる事もできなかったんだね。でも大丈夫。キミの助けを求める声は、ちゃんと届いたから」
微笑んだカノトに優しく頭を撫でられた白猫は、じっと見つめ、くんっと匂いを嗅ぐ。それはどこか、懐かしい匂いがした。
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