第42章 閉ざされた未来と託された希望
「私は…なんて役立たずなんだろう…。腕を撃たれて激痛で動けないからって…自分より重傷なナオトくんの命を…救う事すらしなかった…。これじゃあ…何の為に医療の道に進んだのか分からない…っ」
ベッドの上で膝を抱え、顔を埋めるカノトは悲しさと悔しさが混ざった面持ちで、ナオトを救えなかった事への後悔の念が強く押し寄せ、涙を流す。
「(ナオトくんが死んだって言う事は、もう未来には戻れないってことだ。じゃあ…私達はどうやって未来に戻ればいいの?)」
色んな出来事が頭の中でぐるぐると回り、余計に混乱する。
「なんか…疲れた」
もう兄さんに会えない
今まで死に物狂いで過去を変えてきたのに
誰も何も救えないまま
未来は閉ざされた────。
「(最悪だ…。やっぱり無理なのかな、過去を変えるなんて…。私達の力じゃ、無理だったのかな。)」
泣きそうになるのをグッと堪えるも、未来に戻れない事やナオトの死が色々と重なって、紫色の瞳からポロポロと涙が溢れた。
「どうして…上手くいかないの…っ」
稀咲の手によって
何度も改ざんされた未来
またアイツが
私達が必死になって守ってきたものを
ことごとく壊していった
「許さない…絶対に許さない!!アイツの創る未来なんて壊れちゃえばいいんだ!!理想の東卍なんて潰れてしまえばいい!!稀咲…どこまで私達の邪魔をすれば気が済むのっ!!」
怒りが抑えられず、手元にあった枕を引っ付かみ、壁に向けて乱暴にぶん投げた。
バシッと壁に直撃した枕はそのままポスッと床に落ちた。ハァハァと荒い呼吸を繰り返し、憎しみで顔を歪める。
「ただ…幸せになりたいだけなのに。幸せな世界でみんなで笑いたいだけなのに。そう願うことすら許されないの?」
誰かに答えて欲しい訳でもなかったが、声に出して自分自身に自問した。
「もう…諦めようかな」
虚ろな眼を宿し、ポツリと呟く。
「どれだけ頑張って未来を変えたって、稀咲が更に未来を改ざんしてるんじゃ、最悪な未来は回避できないし。私達の努力が全部無駄に終わるだけだし…」
そうだ そうしよう
全部投げ出して諦めてしまえば
こんなに悩む事もなくなる
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