第42章 閉ざされた未来と託された希望
「もう過去を変えるとかどうでもいいや。未来は所詮『最悪な未来』のまま。私の生きる世界も息苦しいままだ。うん、諦めよう。綺麗さっぱり諦めて、それで…、………、それで…兄さんとの日常も…万次郎くんとの幸せな未来も…全部…手放して…」
"手放す"───?
兄さんがいた世界を?
"諦める"───?
万次郎くんとの幸せな未来を?
「っ……そんなの、絶対にイヤ!」
目尻に涙を浮かべたまま、声を強く張った。両方失えば更に絶望するのは自分自身だ。それこそ本当に命を投げ出すかもしれない。
「兄さんと万次郎くんを失うなんて…そんなの…死よりも残酷だよ…っ!二人が死ぬのはもう見たくない…!」
"だから───!!"と彼女は叫ぶ。
「まだ諦めちゃダメだ!頑張る事を諦めちゃダメだ!ここで挫ける訳にはいかない!だって誓ったんだもん!絶対に二人を救ってみせるって!幸せな世界を手に入れるって!」
虚ろだったカノトの目に次第に光が宿り、ショックで青ざめてた顔にも血色が戻る。
「諦めるな私!まだ頑張れる力は残ってる!ナオトくんが最後に託してくれた希望を無駄にしない為にも前に進め!」
自分を奮い立たせるように鼓舞し、ベッドから降りたところで携帯に着信が入る。
「!」
相手を確認するとタケミチからだった。通話ボタンを押し、耳に当てる。
「もしもし?」
《カノちゃん、平気か?》
きっとナオトの事で落ち込んでると思って、心配で掛けてきてくれたのだろう。相変わらず優しいタケミチに笑みが浮かび、やる気に満ちた声で返事を返す。
「大丈夫。こんなところで挫けてる場合じゃないからね。まだ頑張るよ、私!」
それを聞いたタケミチが電話越しの向こうで小さく笑った気がした。
《そっか!もしオマエが落ち込んでたら慰めてやろうかと思ってたけど、その調子だと心配いらなかったみたいだな!》
「…途中で立ち直れただけだよ。本当は…全て投げ出して諦めようと思ってたくらい絶望してたから…」
《でも無事に立ち直れたじゃん!カノちゃんはさ、絶対に諦めたり、簡単に心折られたりしないんだよな。そういうところ、マジで尊敬する!》
"褒めすぎだよ"と照れくさそうに言った。
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