第42章 閉ざされた未来と託された希望
「なのにもう未来には戻れない。トリガーだった未来のオマエは死んじまった。カノちゃんも未来のマドカさんにはもう会えない。…どうすりゃいい?」
「……………」
「オマエに聞いてもしょうがねぇか」
絶望のどん底に落とされたタケミチは壊れたように笑い、ボソボソと独り言を呟く。
「そうだ!もう一回過去を変えればいいんだ。それでナオトも助けてヒナも助けてマドカさんも助けて。すげぇ、そうだよ、そうだよ。で、みんな助ければ未来に戻れて」
そこまで言って、言葉を止める。
「………、また失敗して…また失敗して…、………、もういいや。オレ…死のうかな…」
ピトッ
「え?」
タケミチの背中に誰かの額が当たる。
「大好き」
「………、ヒナ?」
「ウン」
「え?ずっと聞いてたの?」
「ウン。なんかヒナとナオト勘違いしてるみたいだったから」
「(…やばっ…オレ…めっちゃ未来の事…話してる!!)」
今まで話していた相手がナオトではなく、ヒナだった事を知り、タケミチは驚いた顔で手で口元を覆った。
「…タケミチ君、本当はいくつ?」
「えっと…26…」
「………。他に何も聞かないから一つだけ教えて?未来のタケミチ君はもうヒナにプロポーズしましたか?」
「いや…まだ…。でもっあのっ、オレはずっと結婚できたらなって思ってて」
"何言ってんだオレ!?"とテンパるタケミチ。
「ふーん、それってプロポーズ?」
「………うん!」
「………、じゃあヒナ、死んでもいいよ」
「!」
嬉しそうに微笑むヒナの言葉にタケミチは涙を浮かべる。
「(ヒナ…やっぱオレ諦めねぇ…っ)」
自分に強く誓ったタケミチ。そして二人は朝になるまでずっと一緒にいたのだった。
✤ ✤ ✤
「(──ナオトくんが、死んだ…。)」
目の前で誰かが死ぬのを見るのは
これで3回目だった。
一回目は兄さんが公園で殺された時。
二回目は万次郎くんが死んだ時。
そして三回目にナオトくんだ。
「(何も…できなかった。目の前の負傷者を助ける事も…たった一つの命を救う事も…ただ見ているだけで…何もできなかった。)」
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