第42章 閉ざされた未来と託された希望
───2006年。
「(大丈夫。ナオトが死んでるワケねぇよ。)」
過去へのタイムリープを成功させたタケミチはすぐにその足で、ナオトが待つ公園に急ぐ。
「こんな夜中に急に呼び出して…どうしたんですか?」
「(きっと握手したら現代だ。)」
タケミチはナオトの手を掴み、両手で握手を交わす。"戻れる"──そう信じて…。
「(…頼む、頼むよ。…ナオト…。)」
震える手でナオトの手をギュゥゥッと握るも、現代に戻る事が出来ず、タケミチはその場に蹲る。
「(いつもそばで支えてくれた。オマエがいたからここまでこれた。)」
ナオトとの出会いがなければ、自分はヒナを救う事もできず、今もきっとレンタルビデオ屋で働いていて、年下の店長にペコペコと頭を下げて謝る毎日を送っていたはずだ。
ナオトとの握手がキッカケで過去にタイムリープし、ヒナを救うチャンスを得た。タケミチは何度もナオトの言葉に勇気づけられ、諦めない強さを知った。
けれど…支えてくれたナオトはもういない。過去のナオトと握手しても現代に戻れないのがその証拠だった。
「ナオトぉぉ」
ショックを受けたタケミチは涙を流し、悲しい声でナオトの名前を呟く。結局現代に戻れない事を知ったタケミチは目の前が真っ暗になった。
「タケミチ君…大丈夫ですか?」
「…あぁ、大丈夫。急に呼び出してゴメン。もう帰っていいよ」
滑り台に腰掛け、顔を伏せたままそう言う。ナオトが帰った数分後、まだナオトの死を受け入れられないタケミチの前に誰かが現れる。
「まだいたのかよ…。もう帰れって…」
「……………」
「…なぁ…ナオト。初めてオマエに会った時の事…覚えてる?」
ナオトがそこにいると思い込んだまま、タケミチは静かに未来の事を話し始めた。
「ヒナが死んで…タイムリープして、オレと未来のナオトはあれからずっとヒナを救う為に頑張ってきた。カノちゃんは…マドカさんを救う為にずっと頑張ってきた」
「……………」
「アイツさ…マドカさんが死んでから、寂しそうな顔するんだ。オレの前ではそれを出さないように振舞ってるけど…一人になると悲しそうな眼をしてる。カノちゃんは…本当にマドカさんの事が大好きだったんだ」
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