第41章 絶対的な『王』の名は

「東卍にいさせるには惜しい存在だな」



「え？」



「決めた。オマエ、天竺に来い」



「は!?」



「俺と一緒に行こうよ」



イザナからの衝撃の言葉に目を見開き、驚いた顔を浮かべる。



「東卍を裏切れ、カノト」



「絶対に無理!!」



「王の命令が聞けねーのか？」



「僕は貴方の下僕でも家来でもありません！よって王の命令とやらに従う気はない…！」



「……………」



「なので天竺への勧誘は諦めてください」



「それは『アイツ』が東卍にいるからか？」



「僕は総長を裏切る真似はしない。あの人が東卍にいる限り、僕の居場所はあの人の傍だけです。離れる事はありません」



「…そういうことか」



「え？」



「今のでオマエがアイツを特別視してんのが分かったわ」



「！！」



「何だろうな…すげぇムカつく」



無表情でスッと凍えるような冷たい目に変わったイザナに恐怖心を覚えた。



「(このままじゃ捕まる!!もう東卍を狙う理由を教えてもらうとかどうでもいい!!逃げなきゃ…!!)」



ザリッと片足を一歩後ろに下げ、イザナから目を離さず、距離を取る。



「俺から逃げられると思ってんのか？」



「それ以上近づいたら大声出します」



「出す前に喉元潰してやるよ」



どこか狂ったように笑ったイザナに収まったはずの緊張感が再び襲った。



「もう一度だけ言う。東卍と佐野万次郎を裏切って、俺の元に来い」



「何度も言わせないでよ。僕は東卍を裏切るつもりはないし、マイキーくんの傍を離れる気もないって言ってるでしょう」



「オマエに興味が出てきた。俺の元に来ないなら別のやり方でオマエを手に入れる」



「ふざけんな…何でそこまで僕に執着するんだよ。唯でさえ厄介な相手から逃げ続けてるのに貴方まで僕を捕まえようとするな…！」



心底不快な気分になり、嫌悪感を抱いた眼差しをイザナに向ける。怒りが抑えられず、ギロッと鋭く睨みつけた後、カノトはその場から走り去った。



「"厄介な相手"…。そいつを利用して、アイツを手に入れるって言うのもアリか」



手から放れたアイスがボトッと地面に落ち、それをイザナは冷たい目で見下ろしていた。



.