第41章 絶対的な『王』の名は
「今度は逃がさ───」
男が言葉を続けようとした瞬間、真横から現れた一人の少年の強烈な蹴りによって、その男は蹴り飛ばされた。
「(え……?)」
驚いて目を見開く。その視線の先には男達と同じ"赤"を纏った、褐色の肌に色素の薄い銀髪を持つ少年がいる。
「(味方を…蹴り飛ばした!?)」
カランと花札のようなピアスが揺れた。その少年の背には"初代 天竺 横浜"の刺繍の文字。
「(…助けてくれたの?)」
「……………」
じっと見つめていると急に少年が振り返る。視線がこちらに向けられ、ドキッと緊張感が走り、思わず顔を強ばらせた。
「な、何で…」
「あ?うるせぇよ。」
天竺のメンバーがその少年を見て酷く怯えていた。顔を真っ青にさせ、目には恐怖の色が宿っている。
「(何?何であんなに怯えてるの?)」
すると少年は残りの天竺のメンバーを目にも留まらぬ速さで蹴り倒してしまう。
「(素手じゃなくて足技だけで…。まるで万次郎くんみたいな身のこなしと圧倒的な強さ…)」
この人の方が確実にやばいんですけど!?
待って?逆に私、絶体絶命じゃない?
心臓がバクバクと大きく脈打つ。
「(助けてくれたからって良い人とは限らない。何でか分からないけどこの人…やばい空気纏ってる。)」
「おい。」
「っ!」
「助けてやったのにお礼の言葉も言えねーの?」
敵かも知れないと警戒して注意深く見ていると、振り返った少年がそう言った。一瞬呆気に取られたが、すぐに頭を下げる。
「た、助けてくれてありがとうございました。でも…気絶してるその人達、貴方の仲間ですよね?何で助けてくれたんですか?」
「仲間?コイツらはただの使い捨ての駒だ。それにオマエを助けたのは、ただの気まぐれ。それ以外に理由なんてねえよ」
「(仲間を"使い捨ての駒"扱い…。しかも気まぐれで私を助けるなんて変わってるな。彼にとって私なんて"助けるに足り得る価値"なんてないハズなのに。)」
「なぁ、名前は。」
「え?名前…ですか?」
唐突に聞かれ、キョトンとする。イザナは冷めた瞳でじっとカノトを見つめている。
「宮村…心叶都です、けど…」
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