第40章 これからもずっと傍に(♥)
「あーんしてください」
「あーん…」
ぱくっと伊勢海老の刺身がマイキーの口の中に消えていく。もぐもぐとしっかりと噛み、食感を味わって食べていたマイキーの目が微かに見張った。
「うまっ!伊勢海老の刺身って初めて食ったけどめちゃくちゃ美味いんだな!」
「高級食材ですからね。普段の食卓にはあまり出ないと思います。ちなみにボイルして食べたり、伊勢海老の頭で出汁をとって、味噌汁で飲むと濃厚で美味しかったりしますよ」
「味噌汁かぁーそれも美味そうだな。今度作ってよカノ」
「伊勢海老高いんですけど…」
「別に伊勢海老の味噌汁が飲みたいって訳じゃねーよ。オマエが作った味噌汁が飲みてぇの。だからオレと結婚したら、いろんな具材で味噌汁作ってよ」
「け、結婚って…!」
「なに恥ずかしがってんの?オマエはオレと結婚してくれるんでしょ?違うの?」
「ち…がくは、ない…ですけど…」
ぽぽぽっと頬を赤らめたカノトは当然のように言ったマイキーの言葉に照れた。
「早く大人になって、オマエと一緒の家に帰りたいな」
「万次郎くんと一緒に住んだら、毎日がとても楽しいですね。世界が色づいて見えます」
「オレがいて楽しくないわけねーじゃん。余裕でオマエを楽しませる自信あるからな。つーか幸せにする事以外、考えてねーし」
「っ、……ふふ。」
「なに笑ってんの。オレ本気なんだけど。」
「いえ、その…幸せだなあって」
あぁ本当に
幸せすぎて
怖いくらいだ
「早く大人になってくださいね、万次郎くん。」
「?大人になるのはオマエも一緒だろ?オレとそんなに歳変わんねーじゃん」
「"今は"ですけどね」
そう言うとマイキーは不思議そうな顔をしていた。身体は13歳だが中身は26歳。あどけなさが残る少女ではなく、れっきとした大人の女性。今はカノトだけがマイキーよりもずっと年上で、過ごしてきた時間も違う。
「(私だけが大人なの、ちょっと寂しいな…。もし私が26歳だって言ったら、どんな反応するんだろう。やっぱり年の離れた恋人は嫌だろうなぁ…。)」
そう考えると少し心がチクリと痛んだ。
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