第40章 これからもずっと傍に(♥)
今回宿泊する旅館は全国に知られる名湯であり、旅館の周辺も癒しの観光地として人気の場所で、雑誌に何度も取り上げられている。
「ようこそお越し下さいました。ご予約をされた『佐野心叶様』ですね。券の方を拝見させて頂いても宜しいですか?」
「っ、は、はい…」
「確認致しますので少々お待ち下さい」
「("佐野…心叶"…)」
カノトは照れながら、心の中で何度もその名前を繰り返す。すると隣にいたマイキーが嬉しそうに言う。
「ちゃんとその名前で予約してくれたんだなー」
「マイキーくんが『予約する時はオレの苗字とオマエの名前にして!』って言うから…」
「オレの苗字で呼ばれた気分はどう?結婚してるみたいに聞こえてキュンってしちゃった?」
「…………っ!!」
図星を突かれ、カァッと頬を紅く染める。口許に手を当てニマニマと笑うマイキーに揶揄われた事に悔しさを感じたカノトは照れながら言い返す。
「べ、別にキュンとなんてしてません…!」
「表情と言動が合ってないんだよなー。恥ずかしいからって嘘つかなくていいのに」
「嘘もついてません…!」
「ホントに?オレの苗字で呼ばれてマジでキュンとしてねーの?オマエとおそろいの苗字でオレ嬉しかったのに…」
眉を下げ、わざとらしくシュンと落ち込んだマイキーを見て、"あ〜〜もう!!"とヤケクソになったカノトは観念した。
「嬉しかったですよ!!好きな人と同じ苗字で呼ばれてキュンとしましたよ!!これで満足ですか!?」
「うん、すげー満足。愛されてんなーオレ。てかさ、いずれ同じ苗字になったら、何度も"佐野"って呼ばれる羽目になんのに、今からそんな恥ずかしがってどーすんの?」
「え、あ…そ、それって…」
「言ったじゃん。もう離す気ねーって。それに薬指に予約もしてあるしな。オマエの苗字が"宮村"から"佐野"に変わる日が楽しみだな♪」
「!」
「そうしたらカノはオレの奥さんになるってことだ」
「は!?」
「今から呼び慣れとこーな。な、オレの世界一可愛い奥さん♥」
「っ〜〜〜〜!!」
マイキーからの奥さん呼びにキュンとし、顔を真っ赤にさせるカノトだった。
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