第39章 不器用な友達
「バ…ッ!!バカ言うんじゃねえ!何でオレが寂しがるんだよ!逆にアイツがいなくなって清々するっての!あんな生意気なヤツ…!」
「はいはい」
「本当だからな!?俺別に寂しがり屋とかじゃねーから!!そこは勘違いすんなよ!?」
必死に誤解を解こうとする友人を無視し、教科書とノートを机の中にしまい込み、鞄を机の横に付いているフックに引っ掛ける。
「(…一身上の都合は多分嘘だ。)」
誰も悠生が転校した理由は知らなかったが、カノトだけは薄々気付いていた。悠生が転校することになった本当の理由に───。
「(きっとあの人達が何かしたんだろう。"転校"というのは建前で、本当はおじい様の手で遠くに飛ばされた。学校に電話したのも宮村家の人間だろうな。)」
「吾妻がいなくなったら、女子共はまたお前に夢中になるんだろうな。全女子共の視線を独り占めしやがって…」
「そんな恨めしげに睨まれても」
「はんっ!恨めしくなんかねーやい!」
不貞腐れた友人は両腕を交差させるように組み、ふいっと顔を横に背ける。
「どうせお前はモテない男の悲しさなんて分かんねーだろ!?この年中モテまくり野郎!少しはそのモテ期を俺にも分けろ!」
「ちょっとバンバン叩かないで」
理不尽なことで怒られ、悔しげに涙を流す友人がその怒りをぶつけるように机を両手でバンバン叩く。
「モテる秘訣があれば教えてくれ!」
「興奮気味に鼻息を荒くしないで。秘訣なんて言われても何もないよ」
「じゃあ何でそんなにモテまくりなんだよ!特別何もしてねぇのに女子達にキャーキャー言われやがって!」
「僕は自然とモテてたから」
「カァーッ!!モテる男が言うセリフ…!!」
「…そんなにモテたいの?」
「モテたい!!」
「じゃあまず女の子に優しくしてみたら。あと気遣いも必要だね。君の口の悪さは女の子達の神経を逆撫でするから控えた方がいい」
「おぉう…結構辛辣な。まぁ確かにお前は女子に優しいし気遣いも出来るし、口は悪くねぇよな。でも結局顔だろー?」
机に片肘を付き、掌に顎を乗せて、口を尖らせて言った。すっかり自信を無くしている友人を勇気づかせる訳ではないが、"結局顔"だと云う言葉だけは訂正しておきたかった。
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