第39章 不器用な友達
「知ってた?隣のクラスの青山君、美人で有名な春原さんと付き合ってるらしいよ」
「え!?青山ってあの冴えない地味男!?そんな奴が何で美人の春原と!?だって青山、顔は中の下って感じじゃん!?どっちかって言うと俺の方がカッコイイだろ!?」
「彼の内面に惹かれたんだって。だから"結局顔"じゃないんだよ。あと今のも"口の悪さ"に入るからね。だからモテないんだよ」
「ぐは…っ!!」
ナイフのような鋭い言葉に攻撃力100を受けた友人は心に深いダメージを追い、両手を伸ばしたまま、バタッと上体を机に倒し、死んだように動かなくなった。
「うわぁん!宮村のバカやろー!」
「それも減点」
「…………!!」
するとピタッと静かになった。"まったく…"と肩を上下に竦めて溜息を吐く。
「(悠生くんの狂気は異常だった。どんな手を使ってでも私を自分のモノにしたかった。まさかあそこまで執着が強いなんて。マイキーくんが助けに来てくれなかったら、彼にも捕まるところだった。)」
その時、何故か脳裏に、自分のことを『勇者チャン』と呼ぶ男のニヤけた顔が思い浮かび、頭を振って消し去る。
「(半間…あの男も私に対しての執着心が凄い。何がなんでも私を捕まえる気でいる。狂喜を孕んだあの目…正直怖い。それに私は彼を知らない。どうして半間は最初から私のことを知っていたのだろうか…)」
その謎だけが未だに分からないままだ。
「(未来で半間は私を襲おうとした。途中で羽宮くんが助けに来てくれたから無事だったけど…もし誰も助けに来なかったら今頃私はアイツのモノになってた。)」
ケーキに睡眠薬まで混ぜて
私の全てを奪おうとした
あの一件以来
私はあの男の言うことは
絶対に信用しないと決めた
「(無理やりキスまでしやがって。マジで許さん。あの時は本当に怖くて、泣いてもアイツを喜ばせるだけで、手首にくい込んだ紐が痛くて…本気で捕まったと思った。)」
これからも絶対に
捕まりたくない
「(いや、願うことなら、二度と会いたくない。あの男の狂喜に呑まれたら…きっと私一人の力じゃ抜け出せない。)」
半間への恐怖と不安で気分が落ち込んだが、怒りの方が強く、不快そうにグッと顔をしかめた。
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