第39章 不器用な友達
あの事件から三日が経ち、いつもと変わらない日常が戻った。頬の腫れも治まった為、湿布を剥がし、学校に登校した。
「(ん?今日はやけに騒がしいな。)」
「あ!宮村!」
教室に入るとクラスメイト達がザワついている。何事かと思っていると例の友人がカノトに気付き、駆け寄って来た。
「騒がしいね。何かあったの?」
「それが大ニュースなんだよ!」
慌てた様子の友人がまだ何も知らないカノトに血相を変えて言う。
「吾妻が転校したって!!」
「え?」
「今朝からその話で持ち切りなんだよ!」
「(悠生くんが転校…?)」
突然の事実に驚きを隠せない。チラッと周囲を見回すと、ショックの余り泣き出す女子達もいた。
「悠生がいなくなっちゃったよぉ〜!!」
「イケメンが!!毎日の癒しが!!」
「あたし達に何も言わずに行くなんてヒドイ!!デートの約束だってまだだったのにー!!」
「私なんてまだ連絡先も交換してないのよ!?せっかく仲良くなれるチャンスだったのに!!これでイケメンとのハッピーライフが消えちゃったじゃないのぉ〜!!」
「(…後半は願望丸出しだな。イケメンが一人減って女の子達の荒れ方が凄まじい…)」
穏やかじゃない女子達の叫びを聞きつつ、自分の席に移動し、肩に掛けていた鞄を机に下ろす。友人は後ろ向きで椅子に跨り、煩わしそうに顔をしかめた。
「女子共マジでうるせーな。そういや他のクラスの女子達もショックで倒れて保健室運ばれたってよ」
「『吾妻ロス』が早くも出てるね。今日は保健室のベッドが埋まりそうだ。先生もきっと大変だろうな」
「こんなんで対応に追われるセンセーも迷惑だろうよ。つーか転校する理由が"一身上の都合"らしいぞ」
「一身上の都合…」
「詳しく聞いても曖昧な返事しかしねぇんだよ。お前アイツから転校の話聞いてた?」
「…いや、初耳だよ」
「ったく吾妻も冷てぇヤツだよなー。そりゃこのクラスで過ごした時間は短かったけどさ、転校するならするで俺らに何か一言あっても良いと思わねえ?」
「急だったんだから仕方ないよ」
「そうだけどさぁ…」
「あれだけ彼のことを嫌ってたのに、いなくなったらなったで寂しいんだね」
.