第4章 冷たい拒絶
「でなー、兄ちゃんの友達がさぁ」
「(え!?)」
「聞いてるか?カノ」
「(兄さん…)」
アイロン掛けをしながらカノトに声を掛けるも、返事がないため、振り返る。
「どうした?ボーっとして」
「あ…ゴメン。聞いてなかった」
「じゃあ俺、今まで独り言を?恥ずかしいんだけども!!」
カノトは驚いた顔でマドカを見ている。
「(兄さんが…生きてる。)」
それだけで涙が溢れそうだった。
「ねぇ兄さん」
「んー?」
「私と一緒に宮村の家を出た事、後悔してる?」
「…何でそんなこと聞くんだ?」
「だって兄さんはあの家を継ぐ跡取りだもん。ずっと兄さんはあの人の言いつけを守って家の事とか色々してきたのにそれが全部、私のせいで駄目になっちゃったから…」
「父さんはお前を厳しく躾過ぎたんだ。まだ幼いお前に“子供だから”を理由に甘やかされて育ったと勘違いしてる。お前も苦しかっただろ?いっぱい泣いたもんな?」
「……………」
「あのままあの家に居続けたら、いつかお前が壊れてしまう気がして心配だったんだよ」
「だから…私を連れて一緒に家を出てくれたの?」
笑ったマドカはアイロンを置くと後ろを向いて座る。
「お前を自由にしたかった。お前には何も背負わせたくなかった。でもお前は…きっと心のどこかで不安だったんだろ?」
「私は…あの人の期待に応えたかった。だからたくさん努力した。でも…あの人は私の努力を認めてはくれなかった。一体、どれだけ頑張れば…あの人が私を認めてくれるのか…分からなかった」
「限界だったのが分かっていたから俺は宮村家を捨てる覚悟でお前を守るために家を出たんだ。後悔なんてしてない」
「兄さん…ありがとう」
カノトは嬉しそうに笑った。
「(そうだ…!)」
そして慌てて立ち上がる。
「ごめん兄さん!出かけてくる!」
「あまり遅くなるようなら連絡しろよ?」
「うん!行ってきます!」
家を飛び出し、階段を降りる。
「(兄さんを助けたい!!兄さんのいる世界を取り戻したい!!だから…愛美愛主との抗争を止めないと!!)」
向かった先は東卍のアジトだった。
.