第38章 君の代わりなんて誰ひとり
「確かにオレは不良だし生きる価値もないクズかもしんねぇ」
「!?」
その言葉に驚いてマイキーを見上げる。
「喧嘩だってたくさんするし、血を浴びることもある。コイツを傷付けることだってこの先またあるかも知れない。でも…オレは絶対にコイツだけは不幸にしないって決めてんだ」
「!!」
「コイツの願う幸せも、コイツの笑顔も、オレが壊させたりしねえ。必ず守り抜く。オレの命に代えても。」
「お前の命だと?」
「オレはコイツの為なら死んだっていい」
「っ!?」
「そのくらい、コイツのことが大事なんだ。こんなオレの傍にいることを選んでくれた。オレと二人で幸せになることを願ってくれた。コイツはオレの…宝物なんだ」
マイキーは尚登に言葉を向けたまま、後ろを振り返り、カノトを見て優しく微笑む。
「カノ」
「はい…?」
名前を呼ぶとズボンのポケットから何かを出し、カノトの掌に乗せる。
「これ…突き返されたけど、もっかいオマエにあげていい?」
チェーンが切れたパズル型のシルバーネックレスがそこにあった。
カノトは掌を握り締め、マイキーを見る。
「もちろんです」
「後でチェーンだけ直しに行こうな」
「はい」
嬉しそうに笑って返事を返す。マイキーは首に下げてあるチェーンに親指を引っ掛け、服の中に隠れていた色違いのネックレスを引っ張り出す。
「!持ってて…くれたんですか」
「記憶を失くしても何故か捨てられなかった。コレはオレとオマエを繋いでくれるものだ。オレ達をまた繋いでくれる」
カノトも自分のネックレスを見下ろす。
「ねぇカノ、薬指の約束はまだ有効?」
「え?」
「本当はもう少し待ってから伝えようと思ったんだけどさ」
「?」
「そんなことも言ってられなくなった」
カノトの手を取り、薬指を撫でる。
「佐野万次郎、何をしている。その子に触れていいと誰が言った。心叶は吾妻君の婚約者だぞ。気安く触れるなよ」
尚登が怒り顔でマイキーを睨み付ける。
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