第38章 君の代わりなんて誰ひとり
「わた、私が…どれだけ心配したか…っ!マイキーくんを失って怖かったか…!もう一生思い出さないかと思ったじゃないですか…!ばか…っ!」
マイキーが自分を思い出してくれたことに心底ホッとしたカノトだが、凄く心配を掛けさせたマイキーに対して怒りが収まらず、ポロポロと涙を流しながら怒った。
「そうだよな…オレに忘れられてすごく怖かったよな。ごめんな。」
溢れ出す涙がポタポタと畳に落ちる。マイキーはカノトの目尻に溜まった涙を親指の腹で優しく拭い、罪悪感に塗れた顔で申し訳なさそうに謝る。
「謝るだけじゃオマエに許してもらえねぇことくらい分かってる。だから後でちゃんと謝らせてくれ。今まで傷付けて泣かせた分、ちゃんとお詫びさせてほしい」
ぐずっとすすり泣くカノトはマイキーの精一杯の謝罪にすんっと鼻を鳴らし、可愛くない言い方で言葉を返す。
「…仕方ないですね。ちゃんと心を込めて謝ってくれなきゃ許しませんから。私に心配かけさせた分、めちゃくちゃ甘やかしてください」
「そこは安心してよ。オレ、オマエを甘やかすのめっちゃ得意。でろでろに甘やかすって約束する」
「(そこまでじゃなくてもいいんだけど…)」
愛おしげに見つめるマイキーを見て、カノトも嬉しそうに微笑む。
「(あぁ…やっとだ。悪夢のような日々が、やっと…終わった。)」
「相変わらず泣き虫だね。そういうところも可愛くて好きだけど」
「っ……何言ってるんですかっ」
「すーぐ照れるね」
「照れてませんっ」
「えー照れてるじゃん」
むぅっと頬を膨らませて怒れば、マイキーはそれを可愛いと思ったのか、ニコニコと笑っている。
「おい!!いつまで俺のお嫁さんに触ってんだ!!すぐに離れろ…!!」
「…あ?嫁?」
さっきまで向けていた笑みを消し、冷たい目で悠生を見る。
「彼女はもうお前のもんじゃねーんだよ!今日から俺の婚約者だ!気安く触んな!」
「…テメェがカノの婚約者?何、カノ、コイツと結婚でもすんの?オレがいるのに?」
「ち、違うんですよ。実は───……」
尚登が無理やり婚約させようとしている事やその婚約者が悠生であることをマイキーに話した。
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