第38章 君の代わりなんて誰ひとり
「好きなものはココアとスイーツとアイス。性格は少しツン多めだけど優しくて、ダチの為なら命張れる勇者タイプで、笑うとスゲー可愛くて、オレがちょっとからかっただけですぐに照れたり恥ずかしがったりする」
記憶を失くしているマイキーなら絶対に知らない情報なのに、目の前にいるマイキーは事細かに答えている。
「そんで…」
顔を包み込んだまま、マイキーは笑う。
「オレの世界で一番大事な女で、オマエのめちゃくちゃかっこいい彼氏」
「!」
「だろ?」
「(この顔…あの時とは違う。記憶を失くす前のマイキーくんがいつも私に向けていた笑顔。本当に…思い出したの…?)」
一瞬喜びそうになったが、本当にマイキーが自分のことを思い出したのか疑わしかった。だから少し意地悪をしてみることでマイキーの記憶が戻ったのかを確かめることにした。
「本当に思い出したなら、あの約束も当然覚えてますよね?私と交わした"二つの約束"です」
「あ、疑ってる。別にいいけどさ。それ答えたらオレが記憶取り戻したこと信じてくれる?」
「…答えられたら、です」
"超ヨユー"と自信ありげに言ったマイキーはカノトと交わした二つの約束を口にする。
「一つは"何があっても絶対にオレの傍を離れない"っつー約束。もう一つは"いつか左手の薬指に本物をはめてやる"っていう約束。な?ちゃんと思い出してるだろ?」
「っ…………」
じわりと目頭が熱くなった。本当にマイキーは記憶を取り戻したんだと確信した。
「オマエのこと、忘れてごめん。すげぇ傷付けて泣かせてごめん。…殴って、ごめんな」
頬から手を離し、湿布が貼っている頬に指先の外側をくっ付け、優しく撫でる。
「本気で殴られて痛かったよな。オレに冷たくされて悲しかったよな。それ以外にも散々オマエに酷い事した。本当ごめん。ごめんな…カノ」
「思い出すのが遅い…ッ!!」
目を潤ませたまま、マイキーに怒る。
「…うん。すぐに思い出せなくて悪かった。オマエが怒るのも当然だって分かってる」
マイキーは眉を下げ、申し訳なさそうに謝る。
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