第38章 君の代わりなんて誰ひとり
「君が死んだら俺はどうやって生きていけばいい?俺を置いていくなよ。君は俺の為に生きてくれるんだろ…?」
死ぬつもりだと勘違いしている悠生が焦った様子で取り乱す。
「好きだよ、君が好きだ。愛してる、ずっとずっと愛してるよ。これからは何があっても絶対に俺が守ってあげる。死ぬまでずっと面倒見てあげる。だから俺の傍においでよ…!」
「(無駄だって知ってるけど一回だけ、祈ってみようか。来るはずもない、ヒーローを。)」
目を瞑り、マイキーの顔を浮かべる。
「助けて…マイキーくん」
なんてね────。
無駄な祈りをした後、小刀を持つ手にグッと力を込め、刃をスッと滑らせるように皮膚を切り裂いた。
ガッ!!
「っ………!!?」
───が…首に刀身が刺さる前にその手を強く誰かに掴まれた。
驚いて目を見開いて顔を上げれば、少し息を乱し、悲しそうな顔でカノトを見下ろしている人物がいる。
「え……?」
「勝手に死のうとすんなよ」
「なん、で…」
「オマエがオレを置いていなくなるとかぜってー許さねぇから」
「マイキーくん……───」
カノトの手から小刀を引き抜くと、側に置いていた鞘を拾って刃を収める。そして小刀を悠生の手の届かない場所に放り投げ、驚いて目を見開いたままのカノトを見た。
「何で…ここにいるんです…?」
「何でって、理由は一つしかねえだろ」
両手で頬を包んで上を向かせ、マイキーは安心させるような笑みでこう言った。
「助けに来たよ、カノ」
「助けに…?」
「オマエ、オレに助けてって言っただろ?何でかさ、オマエの助けを求める声は不思議と聞こえるんだよ」
「!」
「だからこうしてオマエの元に駆けつけた。でも死のうとすんのだけはやめて。オマエが死んだら誰がオレを幸せにしてくれんの?カノがオレを幸せにしてくれるんじゃねぇの?」
「私のこと…思い出したんですか…?」
「当たり前だろ。宮村心叶。男装してっけど実は女で、8個上に兄貴がいる」
「!」
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