第37章 オレの『帰る場所』
「オレを消すため…?」
「誰が万次郎を?」
「それは分からねぇけど」
「ねぇ万次郎、本当に突き飛ばした奴の顔は見てないのよね?」
「背中から突き落とされたからな。横にある長くてデカい鏡から見ても顔は確認できなかった」
「そう…」
「でも…落ちる前に、何故かアイツの顔が浮かんだんだ」
「アイツ?」
「オレの大切な──……」
"大切?"
「(今、無意識に口から言葉が…)」
ズキッ
「(っ…また…!!ふざけんな!!ここまで思い出させといてこの先は見るなってか!?冗談じゃねえ!!オレは思い出さなきゃいけねーんだよ…!!)」
ピシッと何かが割れる音が聞こえた。
「(思い出せ。思い出せ。本当のオレを。止まった時間を…動かせ───!!)」
頭の中でパリィン!!っと鏡が割れる音がした直後、一番大好きな人の顔が脳裏にハッキリと浮かんで見えた。
『この先もずっと、私が愛す男(ひと)はマイキーくんだけ。私に触れていいのもマイキーくんだけ。一生涯、愛してますよ。』
「っ!?"カノ"───!!?」
「「!!」」
マイキーはバッと顔を上げた。
「(そうだ…意識を失う前、アイツの…カノの笑う顔が浮かんだんだ!!)」
「マイキー、今"カノ"って言ったか?」
「思い出したの?」
「全部…思い出した」
オーバーテーブルに両手を付き、項垂れる。
「あ"あ"ぁ〜!!オレマジで最低なことした!!一番傷付けちゃいけねー存在を傷付けた!!たくさん泣かせて冷たく突き放した!!ケンチンの言う通りバカなのはオレだろ!!マジで記憶喪失だったオレを殺してぇ〜!!」
罪悪感と後悔に押し潰されそうになるマイキーは苛立ちを露わにし、頭を抱えた。
「何が好きじゃねぇだ!!オレは出逢った時からアイツに惚れてるっつーの!!むしろ好きを通し越して愛してんだよッ!!」
「マイキーちょっと落ち着け?」
「そうだ!!カノ…!!」
病室を出て行こうとするマイキーをドラケンは慌てて止める。
「どこ行くんだよ!?」
「アイツ探しに行く!!」
「今から追いかけても見つからないわ」
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