第37章 オレの『帰る場所』
「!お前…その顔どうした?」
「……………」
絶望感の真っ只中に落ちているカノトは自分を見て驚くドラケンの問いかけに言葉を返さず、無言で病室を出て行った。
「おい!カノ!」
呼び止める声にも無反応。ドラケンはふらふらと帰って行くカノトの背中を見送る。
「!海凪、お前も来てたのか…」
「ケンちゃん…」
病室に海凪もいた事で何かを察したドラケンは溜息を一つ零す。
「お前らが揃ってたって事は、きっと何かあったんだろうな。それも…カノが泣いて出て行っちまうほどの」
顔をしかめるドラケンの目がマイキーに向けられる。責めるような言い方にマイキーは悲しげに瞳を揺らし、黙り込む。
「海凪、少しコイツと二人で話させてくれ」
「…うん、わかった」
ドラケンの真剣な表情に海凪は何も言えず、椅子から立ち上がり、マイキーを一瞥すると病室を出て行った。
「色々聞きてぇが…まず、アイツの頬に湿布が貼ってあった。二日前にオレが見た時には貼ってなかった湿布だ。お前、なんか知ってるか?」
「…オレが、殴ったんだ」
「は?お前が殴った…?」
「昨日、アイツは海凪を階段から突き落とした。それで思わずカッとなってキレて…殴っちまった」
「突き落としたって…カノがか?」
マイキーは頷く。
「わざとじゃねーんだろ?」
「…アイツはオレが海凪を好きでいるのが気に入らなかったんだ。だから海凪が邪魔になってわざと突き落としたに決まってる」
「カノがそう言ったのか?」
「言ってねぇけど…でも分かるんだよ。アイツはどうしてもオレを他の奴に盗られるのが嫌だったんだ。アイツはそういう奴なんだよ」
「ハァ…あのなぁマイキー。一ついいか?」
「何?」
「お前、馬鹿だろ」
「あ?」
「カノのことなんも分かってねーわ。普段は大好きオーラ全開で俺らの前でもお構い無しにイチャついてんのに、記憶無くしたらアイツを悪者みてぇにしやがってよ」
呆れ返るようにドラケンは後頭部に手を遣る。マイキーの顔が険しそうに歪められた。
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