第37章 オレの『帰る場所』
「マイキーくんなんか嫌い!!大嫌い!!」
「っ…………」
「私一筋って言ったのも嘘なんでしょ!?ずっと心のどこかで私と海凪ちゃんを重ねて見てたんでしょ!?本当は傍にいてほしいのは彼女なんでしょう!?」
いろんな感情をぶつけるようにマイキーの胸をドンッと叩き、顔を上げ、ぼやける視界でマイキーを憎らしげに睨む。
「今までくれた言葉も愛も全部、海凪ちゃんに向けて言ってたんでしょ!?キスもそれ以上のことも全部…全部!!もうッ、マイキーくんのバカ!!嫌い!!大嫌い…っ!!」
「なぁ、ちょっと落ち着けよ…宮村───……」
「っ!苗字で呼ばないで!!」
「!!」
「私を苗字で呼んだことないでしょ!?普段の呼び方すら忘れてるの!?」
「…悪い」
「本気で悪いと思ってないくせに…っ」
「本気で悪いと思ってるよ」
「もう…信じない…っ」
「ごめん」
「うるさい…っ」
逆に謝られたことが何故か悔しくて、乱暴に涙を手首で拭う。すると熟睡していた海凪が目を覚まし、ゆっくりと顔を上げた。
「え…?何でアンタがここに…?」
「海凪…」
「ほらそうやって彼女を見る」
「!」
「拒絶しないで受け入れる」
「オレは…」
「…どういう状況?」
目を覚ましてみれば、涙を流すカノトと眉を下げ、沈んだ表情を浮かべているマイキーがいた。二人の間に流れる重苦しい空気を感じ取った海凪は何が起きているのか分からなかった。
「中途半端に愛さないで。好きにさせないで。ずっと傍にいるって約束したのにどうしてマイキーくんが離れて行っちゃうの…?」
「!」
「この先も私だけを愛してくれるって言ったのに何で裏切るの?こんな思いするくらいならマイキーくんを好きにならなければ良かった」
カノトは涙を流したまま虚ろな目を宿す。その絞り出した声はどこまでも弱々しく、疲れているようにも思えた。
「嘘つき」
マイキーから離れ、背を向ける。
「…もう、いいです」
「え?」
「別れてあげます」
その言葉にマイキーは目を見開いて驚いた。海凪も目を丸くさせて驚いている。
.