第37章 オレの『帰る場所』
「(まさかどら焼きが買えるなんてラッキーだったな〜♪病室戻ったら食おっと♪)」
病室にいても退屈だったマイキーは暇潰しに売店に行っていた。そこで見つけたどら焼きを3個買うと、るんるん気分で病室のドアを開ける。
「!海凪…?」
突っ伏すようにベッドに上体を預け、心地良さそうに眠っている海凪。マイキーは静かにドアを閉める。
「(寝てんのか…?)」
どら焼きをオーバーテーブルに置き、海凪を見れば、手に何か握っていることに気付く。
「あ!オレの携帯!」
「ん…んん…」
「(っと、やべ…。)」
驚いて大きな声を出してしまう。それに海凪が小さく反応し、身動ぎする。慌てたマイキーはパッと手で口を覆った。
「(起こしたかと思った…)」
ホッと安堵の表情を見せ、海凪の手からゆっくりと携帯を抜き取り、置き手紙の内容を読んだ。
「(ずっと見当たらねぇと思ったらやっぱ無くしてたのか。きっとぶつかった時に落としちまったんだな。)」
マイキーは携帯を開く。
「…ん?何だこの待ち受け?メイド服着た女?何で変わってんの?確かオレの待ち受けってバブだったよな…?」
自分の知らない間に待ち受けが変わっている事にマイキーは驚く。"誰が・いつ・何の為に"。そんな疑心暗鬼に駆られるも、記憶を失くす自分が変えた事を今のマイキーは知る由もない。
「…怖ッ。誰かが勝手に変えたのか?つーか誰だよこの女。何でメイド服?あーでも…顔は結構可愛い。むしろオレ好み。」
可愛いと褒めるマイキーだが"そうじゃなくて"と余計な邪念を払い、改めてメイド服の女をじっと見つめる。
「(もしかしてコイツがオレの彼女?でもそうなるとアイツは恋人じゃないって事になるよな…?)」
考えれば考えるほど混乱し、マイキーは苛立ちで髪をぐしゃくじゃと掻き乱す。
「あ"〜!!意味わかんねぇ〜!!」
「ん"…んん"…」
「っ…………」
「スゥー…スゥー…」
一瞬起きるかと思ったがすぐに寝息が聞こえた。マイキーは携帯をオーバーテーブルに置いて海凪が眠る側のベッドに片手を付き、じっと海凪の寝顔を覗き込む。
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