第35章 壊れた愛の絆
「…醜い嫉妬です。二人に対して苛立ちが治まらなくて、つい頭に血が昇りました」
「醜い嫉妬?どういうことだ?」
カフェであった出来事をドラケンに話す。
「──それでマイキーくんに冷たく拒絶されちゃったんです」
カノトから一連の流れを聞いたドラケンは小さなため息を洩らす。
「…なるほどな。それで海凪ともマイキーとも喧嘩しちまったってことか」
「…完全に私が悪いですよね。二人は何も悪くないのに、一人で勝手に怒って、仲をこじれさせてしまったんです」
「お前だけが悪い訳じゃねーだろ。少なからず、海凪にもマイキーにも良くなかった所はある。全部がお前一人のせいじゃねぇよ」
「でも…マイキーくんを信じてあげられなかった。ちゃんと私だけを好きな事も、愛してくれてる事も、知っていたはずなのに…」
カノトは悲しそうに瞳を揺らす。
「好き過ぎるから不安にもなる…か。なぁカノ、今もまだ、マイキーが海凪を好きだって思ってるか?」
「…今のマイキーくんは記憶を失くしています。私の事も忘れてます。それはつまり…私を想う気持ちすら消えてしまっているという事です。今のマイキーくんの心の中には多分、碓氷さんがいます」
「……………」
「確信はないですよ?でも…女の勘ってやつですかね。一度静まった恋心が、私の存在が消えた事で、また芽生え始める気がするんです」
「俺はそうならねぇって信じてるぜ。アイツがどんだけお前に惚れてると思ってる」
「!」
「記憶を失くしても、お前のことが分からなくても、アイツが好きなのはお前だ。アイツは誰よりもお前のことを大事に思ってる。正直、海凪を想ってた頃よりもずっと、アイツはお前にベタ惚れだよ」
カノトを見かける度に嬉しそうな顔をしているマイキーを何度も見てきたからドラケンは知っている。カノトのおかげでマイキーは変われた。
「アイツはお前がいねえと腐っちまう。きっと今、アイツは帰り道が分からなくなってる。本当はお前の所に帰りたがってるはずなのに、進む道を間違えて、海凪の所に歩いて行っちまってるんだ。でも…それを引き戻すのがお前の役目だろ?」
「私の役目…」
カノトはドラケンの言葉に瞠目した。
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