第35章 壊れた愛の絆
マイキーの記憶喪失から一夜明け、ドラケンに電話で呼び出されたカノトは武蔵野神社へと一人やって来た。
「ドラケンくん」
「顔色ひでぇな。ちゃんと寝たか?」
「…少し寝不足です」
「飯は?」
「あまりお腹が空かなくて…」
「だろうと思って来る途中のコンビニでサンドイッチ買って来たから食えよ」
ゼファーのハンドルに引っ掛けてあった袋を外し、差し出す。
「ありがとうございます。わぁ、ハム&たまごのサンドイッチ!飲み物は…ココア?」
ドラケンの気遣いに甘え、袋を受け取って中身を見ればサンドイッチの他に缶のココアが二個入っている。
「本当はお茶とか牛乳にしようと思ったんだけどよ、ココアが好きだって前にマイキーから聞いてそれにした」
「そうでしたか。でも何で二つも…?」
「マイキーの分」
「マイキーくんの?」
「今日も見舞いに行くんだろ?それ飲みながら昔の話して、思い出すきっかけ作れ」
「思い出すきっかけ…」
自信のない表情を浮かべるとドラケンの手がぽんっとカノトの頭に置かれる。
「絶対に諦めんなよ。今は難しいかもしんねーけど、アイツは必ずお前のこと思い出す」
「ドラケンくん…」
「だからめげずに毎日会いに行け。アイツに何度冷たくされても挫けんな。お前らは一緒にいなきゃダメなんだからよ」
「(そうだ、忘れられたくらいで落ち込むな。あんなに大事な時間をずっと一緒に過ごしてきたんだ。)」
ドラケンに励まされ、落ち込んでた気分が少し軽くなり、ふと微笑みを浮かべる。
「諦めませんよ。だって…この先もずっと一緒にいるって約束したんです。どんなことがあっても離れないって…誓ったんです」
「そうか。ところでカノ、昨日目が腫れてたのってやっぱマイキーと喧嘩したからだったんだな」
「!」
「お前言ってたよな?"この間喧嘩した"って。なのに感動もので泣いたとか言いやがって。ったく…嘘つくの下手過ぎなんだよ。まぁ俺は気付いてたけどな」
「……………」
「何があった?俺に話せるか?」
ドラケンは優しい声色で聞く。悲しげに目を伏せたカノトはポツリポツリと小さく話し始めた。
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