第34章 記憶から消えた君
「優しいね、君は。いつも私のことを心配してくれる。本当に私は良い友達を持った」
「なんたって英雄と勇者の最強コンビだからな!友達を超えた絆があるってもんよ!」
「ふふ、最強コンビだ。さて…私も今日は家に帰ろうかな。夕飯の準備もあるし」
「送ってく」
「ありがとう」
立ち上がって歩き出そうとした時…
ドンッ
「っ、す、すみません!」
「!アンタ…」
「え?」
下げていた顔を上げる。
「っ!?碓氷…さん…」
ぶつかった相手は海凪だった。
「「……………」」
気まずそうに目を逸らすカノトと違い、海凪は相変わらず無表情を浮かべている。
「万次郎の病室ってどこ?」
「碓氷さんもマイキーくんを心配して?」
「アタシが心配したらいけない?」
「いえ…マイキーくんの病室ならあっちです」
「随分と顔色が悪いわね。立っているのもやっとって感じ。無理もないか…アンタの好きな相手が階段から落ちたって聞いたら気が気じゃないものね」
「……………」
「でも、酷い顔。帰ったらすぐに休みなさい。アンタがそんな顔してると万次郎も心配するわ」
「(酷い態度を取っちゃったのに…言葉は冷たいけど、やっぱり彼女は優しいな…)」
ぶっきらぼうで無愛想。人に誤解を与えるような冷たさを持ち合わせているが、今まで会った海凪は態度こそ素っ気ないけどカノトのことを何かと気にかけてくれていた。
「聞いてる?」
「はい…ありがとうございます」
「別にお礼を言われることじゃない。それじゃあアタシ、行くから」
それだけ告げると海凪は横を通り過ぎ、マイキーの病室へと向かって歩いて行った。
「すげー美人な人だったな。カノちゃんの知り合い?」
「知り合いというか…」
「?」
「彼女は碓氷海凪ちゃんと言って、東卍の創設メンバーじゃないけど、昔から場地さんや羽宮くん達とも交流がある人だよ」
「へぇ!じゃあ過去のマイキー君達を知ってんだ!けど…ちょっと冷たい感じだったな」
「それと…マイキーくんの初恋だった人」
「ん!?誰の初恋だったって!?」
「だからマイキーくん」
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