第34章 記憶から消えた君
「…正直、これは悪い夢なんじゃないかって思ってます。マイキーくんが記憶を失って…私のことだけ忘れて…好きじゃないなんて言われて…何かの悪い夢だと…」
「俺らも悪い夢だったら良かったって思うよ。けど…現実だ。マイキーはお前のことだけ忘れちまってる。お前のことを大切に想うあまり、記憶から消えちまってんだ」
「どうして…マイキーくん」
「…とにかくお前はもう少し休んでけ。タケミっち、カノのこと頼むな」
「はい」
ドラケンはカノトを慰めるように頭に手を置き、三ツ谷は肩にポンッと手を乗せ、一緒に帰って行った。
「…カノちゃん」
「占い…当たった」
「え?占い?」
「良く当たるって噂の恋愛占い…私、今日…10位だったの。何を言っても相手に信じてもらえないって…あんまりしつこいと相手を怒らせちゃうかもって…ほぼ当たってた」
「占いってインチキが多いじゃん!たかが占いで結果が悪かったからって本当に当たるとか限らないだろ!?」
「でも…マイキーくん、私が何を言っても信じてくれなかった。それに…しつこいって言われた。私が何度も恋人であることを確認したから…」
「……………」
「ねぇタケミチくん。何でみんなのことは覚えてて、私のことだけ忘れちゃうのかなぁ」
泣きそうな顔で力なく笑う。
「き、きっと大丈夫だよ!マイキー君なら絶対に記憶を取り戻すって!だから元気だせよ!な!?」
「………………」
タケミチが励ますもカノトは表情を沈ませたままだ。
「…マイキー君はカノちゃんのこと忘れたりしねーよ」
「え?」
「言ったじゃん。マイキー君はお前のことがめちゃくちゃ大好きだから完全には嫌いになれないって。いくら記憶がなくても本人が気付かないだけでお前を想う心だけはきっとあるはずだ」
「…タケミチくん」
「流石の俺だってマイキー君バカ野郎って思ったよ。何で一番忘れちゃいけねー奴を忘れてんだって。何で一番大切な奴を傷付けてんだって」
タケミチの目にはマイキーに対する怒りが宿っている。そんな彼を見て力ない笑みを浮かべた。
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