第34章 記憶から消えた君
「(今…気持ち悪いって思った?)」
「マジで何の冗談?男が恋人とか…オレを驚かせるつもりならもっとマシな嘘つけっての」
「(冗談って…何それ。男装した私が恋人だったら…受け付けないって言うの?)」
「…ダメだ。マジでカノのことだけ記憶からすっぽり抜けてやがる」
「(私のことだけ…記憶から?)」
マイキーの記憶からカノトの存在だけが綺麗さっぱり消えていた。
「え…なにオマエら。何でそんな深刻な顔してんの?まさか本気でコイツとオレが恋人同士だって思ってねーよな?」
「いい加減にしてください」
「!」
「そっちこそ悪ふざけが過ぎます。私のこと…本当は覚えてるんでしょう?」
「あ?」
「この間喧嘩しちゃったから、それで仕返しのつもりでこんな悪ふざけしてるんでしょ?ちょっとこの仕返しは冗談キツイです」
「仕返し?そんなもんしてねーよ。さっきから何言ってんだオマエ。てか男のクセに自分のこと私って言ってんの?」
「!!」
「変なの」
「っ…………」
「いい加減にしろマイキー!!」
「は?何でケンチンが怒るんだよ?」
「コイツがお前に会うまでどんな気持ちでいたと思ってんだよ!!目覚まさねぇって聞いて怖くて震えてたんだぞ!?それなのにお前はカノを否定する事ばっか言いやがって!!」
「…ドラケンくん」
「うるせぇな…」
怒鳴るドラケンの言葉にカチンときたのか、マイキーが声を低くして苛立つように言う。
「知らねぇって言ってんだろ!?勝手にコイツ連れて来て恋人だって言われても信じられるかよ!!そもそもオレはコイツのことなんか好きじゃねぇ!!」
「!!」
バンッと机を強く叩いたマイキーの口にした言葉にカノトの顔がショックで強ばった。
「(息が苦しい。涙が溢れそう。心臓が痛い。)」
紫色の瞳を見開いたまま、両手を重ねた手を胸に添え、顔を俯かせる。
「…恋人、なんですよ」
震える声で小さく呟く。
「本当に…恋人なんです。お願いだから…好きじゃないなんて…言わないで。私は…マイキーくんの…」
「しつけぇよ」
苛立つようにマイキーは冷たい声でカノトを拒絶した。
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