第34章 記憶から消えた君
「ほらマイキー、カノだぞ。お前を心配して慌ててすっ飛んで来たんだからちゃんと礼くらい言っとけよ」
「!」
「会いたかっただろ?」
ベッドに座るマイキーと目が合った。その黒い瞳に見つめられドキッとしたが、それよりもちゃんと目の前にマイキーがいることに泣きそうになる。
「マイキーくん…大丈夫ですか?階段から落ちたって聞いて凄く心配だったんです」
「え?あー…うん、大丈夫だけど…」
「無事で本当に良かった」
「……………」
目を潤ませながら微笑んで言えば、マイキーはどこか気まずそうな顔で視線を横に逸らす。
「?」
その様子を不思議に思った。
「あの…マイキーくん?」
「何?」
「え…いや、何って…」
随分と言い方が素っ気ないような…
「つーか心配してくれてるとこ悪いんだけどさ…ごめん、誰だっけ?」
「は……?」
マイキーから言われた言葉に衝撃を受け、固まった。それはこの場にいる全員が同じ反応で、ドラケン達は驚いた顔を浮かべている。
「おいおい…何の冗談だよマイキー。カノ以外に誰に見えんだ?」
「お前の大好きなカノだろ?いくら強く頭打ち付けたからって流石に笑えねーよ」
「は?大好き?何言ってんだ三ツ谷。コイツどう見ても男じゃん。オレ、男を好きになる趣味ねーし。そっちこそ何の冗談だよ?」
「っ………!?」
真面目な顔でマイキーは二人の言葉に少し怒った言い方をする。カノトは一瞬で目の前が真っ暗になった。
「マイキーお前…マジでカノのこと分かんねぇのか?」
「?分かんねぇも何も、オレら今会ったばっかだろ。てかマジでコイツ誰?ケンチン達の知り合い?」
「(マイキーくんが…私を分からない?一体…何が起きてるの…?)」
「誰って…何言ってんスか!!カノちゃんはマイキー君の恋人じゃないですか!!」
「は?恋人?オレが…コイツの?」
戸惑ったような瞳が向けられる。
「恋人って…明らかに男じゃん」
その顔を見た瞬間、カノトは絶望感に呑まれる。
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