第34章 記憶から消えた君
「まぁそれが、誰かのイタズラで起こった誤作動だったみてぇで、客は全員無事だったらしい。ガキとか赤いボタンのやつ押したくなるだろ?今回そのパターンらしいぞ」
「イタズラの度が超えてます!!」
「俺に怒ったって仕方ねーだろ」
「本当に怖かったんですよ…っ。マイキーくんが目が覚めないって聞いて…もし意識が戻らなかったらどうしようって…っ」
「そうだな。お前はアイツのことがすげー心配だったんだもんな。泣きそうになっちまうくらい、不安だったんだよな?」
「そうですよっ」
目をウルウルさせながら言う。
「あー泣くなよ?お前を慰めんのは俺じゃなくてアイツの役目なんだからさ」
「…ドラケンくん。早くマイキーくんに会いたいです」
「おう。じゃあ行くか」
ドラケンの隣に並び、マイキーがいる病室に向かって歩き出す。
「てか何で目腫れてんの?」
「あー…はは。実は夜遅くまでドラマの再放送やってて、それが感動モノで…つい涙腺が崩壊しちゃいました」
「…へぇ。マイキーと喧嘩でもして泣いたのかと思った」
「!!」
鋭いドラケンにギクリと肩が跳ねた。
「まさか…そんなわけないじゃないですか」
「…ならいいけどよ」
下手くそな笑顔を浮かべるカノトをチラリと盗み見るドラケンだが、それ以上は何も言わなかった。
「着いたぞ」
「(喧嘩中だし緊張する…。マイキーくん、いつもみたいにカノって呼んでくれるといいな。)」
扉を開ける前に深呼吸を一つした。
「あー!タケミっち!それオレのたい焼き!勝手に食うなよ!」
「いやいや!!マイキー君の分はちゃんと買ってきたじゃないっスか!!このたい焼きは俺のです!!」
「ア?」
「ヒェッ」
「ほらマイキー。俺のたい焼きやるからタケミっち威嚇すんな」
「わーい!さすが三ツ谷!」
病室から賑やかな声が聞こえる。
「アイツらうるせーなぁ」
「(久しぶりのマイキーくんの声だ。良かった、思ったよりも元気そう。)」
ガラッとドラケンが扉を開けた。
「お前らもうちょっと静かにしろよ。病室の外までお前らの喧しい声が聞こえんだよ」
「おー!ケンチン!」
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