第34章 記憶から消えた君
「マ…マイキーくんが目を覚まさないってどういうことですか!?階段から落ちたって…一体何があったんです!?」
取り乱すカノトにドラケンは冷静に言った。
《詳しい事は病院に着いてから話す。今迎えのタクシーをお前ン家に寄越したからそれに乗って病院まで来い。》
それだけ伝えるとドラケンの通話は切れた。カノトは電話が終わった後も状況が呑み込めず、一点を見つめたまま動かない。
「とにかく…病院…あ…掃除機…は、帰って来てから片付けて…。……………。」
恐怖と絶望が一気に押し寄せ、カノトは泣きそうになる顔を両手で覆い隠した。
その後、すぐにドラケンが頼んだタクシーがマンションの前で止まり、慌てて乗り込み、病院まで向かう。
「もう少し早く飛ばせませんか!?」
「これ以上出したら捕まっちゃうよ!」
一刻も早くマイキーの元に駆け付けたいのにこういう時に限って嫌がらせのように赤信号が連続して続き、苛立ちを浮かべた。
✤ ✤ ✤
「ドラケンくん!!」
「!」
「マイキーくんは!?」
タクシーから降りて急いで病院内に入り、看護師に場所を教えてもらいそこに向かうと、ドラケンが待っていた。
「安心しろ、命に別状はねぇ。さっき担当医が来て後遺症も残らねぇって言ってた」
「…本当に?」
「嘘ついてどうすんだよ。つーかお前、髪ボサボサ。強風にでも煽られたか?」
「こ、これは急いで来たから…!!」
揶揄うように笑うドラケンの言葉に恥ずかしくなり、乱れた髪を両手で押さえる。
「それで…目、覚ましました?」
「お前と電話切って少ししてな。目が覚めて普通に会話もできる。今、病室に三ツ谷とタケミっちもいるんだ」
「はぁぁぁ〜!良かったぁ…!」
マイキーの無事を確認すると酷い安心感で気が抜け、胸を押さえてその場に蹲る。
「それにしても、どうしてマイキーくんは階段から落ちたんですか?」
「ショッピングモールに用があったらしくて一人で行ってたみたいなんだけどよ、そこで火災報知器が鳴って、客達が悲鳴を上げて避難する中、マイキーも階段から下りようとした時、ぶつかっちまったって本人は言ってたな」
「火事があったんですか!?」
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