第34章 記憶から消えた君
ブチッ
「!」
リビングで掃除機を掛けていたカノトの首からネックレスが落ちた。
「やだ…チェーンが切れちゃった」
掃除機のスイッチを止め、床に落ちたネックレスを拾うと急に不安な気持ちが込み上げてきた。
「…マイキーくん?」
何故だかマイキーの顔がふと浮かんだ。
「こういうのって良くない事が起きる前触れって言うけど…偶然切れただけだよね?」
それでも不安が拭えず、心配そうな表情を見せる。掌の中にネックレスを握りしめ、"大丈夫"と何度も自分に言い聞かせた。
「(今日の夕飯は兄さんがパスタ食べたいって言ってたし、ナポリタンにしようかな。あとサラダとスープも付けよう。)」
粗方掃除を終え、椅子に座り一段落する。時間は掃除を始めてから2時間経っていた。
「そうだ…マイキーくんに電話。出てくれるといいな…」
まだ気まずさはあるが、ちゃんと話し合って仲直りしないと溝は広がったままだ。それだけは嫌だと思い、携帯の着信履歴からマイキーの番号を見つけた時だった。
Prii…
「わっ…ドラケンくん?」
とりあえず電話に出る。
「もしもし?ドラケンくん?」
《カノ、今どこにいる?》
「どこって家ですよ。今掃除機かけ終わって一段落していたところです」
《そうか……》
「どうしたんですか?いつもより声が暗いですよ?」
《今から○○○病院に来てくれ。》
「え?病院?」
病院と聞いて何故か嫌な予感がした。
「何で…病院なんです?」
ドクンッ
「(まだドラケンくんから何も言われてないのに…胸騒ぎが止まらない。)」
《…落ち着いて聞いてくれ。》
「(ドラケンくんの声、震えてる?)」
《マイキーが…階段から落ちて…病院に運ばれた。》
「…………え?」
目の前が真っ暗になった。
《落ちた時に頭を強くぶつけたらしくて…まだ目を覚まさねぇんだ。》
「(何…ドラケンくんは…今なんて?マイキーくんが…階段から落ちて…目が覚めない───?)」
ドラケンの言っている意味が分からず、携帯を耳に当てたまま、目を見開き放心する。
.