第34章 記憶から消えた君
「世界一。オレと出逢う為に生まれてきてくれたんだってマジで思う。どこかに閉じ込めて一生愛でてたいし、アイツの目にはオレしか映してほしくねぇくらい好き過ぎてる」
「(うわぁ…この子、愛が重い。)」
「オレが選んだ指輪も絶対に喜んでくれる」
「ちなみに…千円上乗せして頂くと指輪に誕生石を埋め込むことも可能ですよ」
「そんなのもできんの!?めっちゃいいじゃん!てかそんなに安くて大丈夫?店赤字じゃね?」
「(さりげなく失礼だなこの子。)」
ひくっと顔を引き攣らせる。それでもスマイルだけは忘れず、接客を続けた。
「ではこちらのペアリングにお客様達の誕生石を埋め込ませて頂きますね。お二人の誕生日を教えて頂けますか?」
「オレが8月で彼女が6月」
「ペリドットとムーンストーンですね。少々お待ち下さい。出来上がり次第お持ちします」
誕生石を確認すると指輪を持ったまま、店員は奥へと引っ込んだ。その数分後、二つの指輪ケースを持った店員が戻ってきた。
「お待たせ致しました。こんな感じで如何でしょうか?」
パカッとケースを開くと銀色に輝く指輪にはマイキーの誕生石である黄緑色のペリドットと黄色のムーンストーンがそれぞれ埋め込まれている。
「ペリドットってこんな色してんだ」
「『太陽の石』とも呼ばれているんですよ」
「太陽の石?」
「ネガティブなエネルギーを取り除き、ポジティブなエネルギーをもたらしてくれるんです」
その他に夜に輝きを放つペリドットは暗闇への不安や恐怖を吹き飛ばし、ネガティブなエネルギーから身を守る護符としても活躍し、どんな時にも明るい希望と勇気をもたらしてくれるのだと店員は教えてくれた。
「ちなみに6月の誕生石であるムーンストーンはですね…『愛を伝える石』とも言われています。大切な人の心に寄り添って、悲しみや不安から守るという伝承もあるんですよ」
「(…まるでカノみたいだ。失うばかりのオレの心に優しく寄り添って、いつも笑顔でオレを包み込んでくれる。)」
「彼女さん、喜んでくれるといいですね」
「うん」
「今袋にお入れしますね」
指輪が入ったケースを高級な紙袋に入れてくれる。マイキーは代金を支払うとその紙袋を受け取った。
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