第34章 記憶から消えた君
「んで?その条件って?」
「"恋人である証拠"を見せて頂くことです」
「恋人装うフリして買いに来る奴とかいんじゃねえ?そういう時どうしてんの?」
「そこはご心配なく。恋人の証と言っても手を繋ぐとか抱きしめ合うは条件外にさせて頂いてます」
「なら何で判別すんの?」
「本当の恋人同士ならキスで証明して頂きます。ただお相手様に内緒で買いたいというお客様もいるので、そのような場合は写真などでも構いませんよ」
「へぇ、写真でもいいんだ。それだったらある。ちょっと待って」
「(え?あるの?キスを証明できる写真が?この子…中学生よね?)」
「本当は彼女から誰にも見せんなってキツく言われてんだけどお姉さんだけ特別な?指輪安くしてもらえるかもしんねぇし」
「(きっと頬とかよね!軽くチュッて感じのキス!あーでもこの子カッコイイし、彼女もきっと可愛いんだろうな〜)」
「オレの彼女めちゃくちゃ可愛いからお姉さんもビックリするよ。たまにツンが多めなんだけど笑った顔とか照れた顔がマジでやべえの。可愛すぎて天使。」
「(おぉ…ベタ惚れ。というか照れずにそういうこと言えちゃうなんてさすがイケメンは違うわ…)」
携帯の写真フォルダーから"恋人の証"を探すマイキーのスクロールしていた指が止まる。
「あった。ほら、これ。」
「どれどれ…」
マイキーは写メを店員に見せた。
「!!?」
差し出された携帯の画面を見た瞬間、店員は笑顔を張り付けたままピシッと固まった。
「(ンンン!!?キスしてるけど唇ー!!!これ絶対舌入ってる…!!!しかも…え!?"彼女"って男の子なの!?ふあッ!!?)」
予想してなかった展開に頭がパニクり、顔を真っ赤にさせる。
「(ていうかこの体勢めちゃくちゃエロくない!?向かい合わせて座ってキスしてるとか!!イマドキの中学生ってみんなこうなの!?)」
「これで証明できた?」
「へぇ!?あ、だ…大丈夫ですよ!?」
「な、オレの彼女すげー可愛いだろ!髪型も可愛いし、紫色の目も綺麗で、オレのことが大好きって気持ちがダダ漏れてるよな〜♥」
「…惚気けるほどお好きなんですね?」
そう聞くと、マイキーは愛おしげに画面を見つめながら微笑む。
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