第34章 記憶から消えた君
「はぁ…会いてぇ」
"会って抱きしめてキスしたい"
「(会えないの…こんなに寂しいんだな。)」
寂しさで心にぽっかり穴が空き、カノトの笑顔を思い浮かべる度に、胸が切なくギュゥゥゥっと締め付けられる。
「(ぎゅってハグしてたくさんちゅーしたい。アイツの温もりがほしい…。好きだって何度も伝えてアイツを安心させたい。)」
タケミチの言う通り、マイキーはもうカノトがいないとダメな自分になっていた。
「("オレがこの先もずっと愛してるのはオマエだけだよ"って信じさせたい。だから…早く仲直りしねえと。)」
「何かお探しですか?」
落ち込み中のマイキーの元にショップの店員が歩み寄り、ニコリと笑いかけた。
「もうすぐ彼女の誕生日なんだ」
「そうなんですね」
「それで指輪贈りたいって思っててさ、ペアリングで中学生でも買える安いのってある?」
「(中学生で指輪のプレゼント!?しかも誕生日に彼女にあげるの!?ペアで!?)」
高校生かと思いきや、マイキーが中学生と聞いて衝撃を受ける店員。流石に顔には出さなかったが、内心では驚きを隠せずにいた。
「え、えっと…ペアリングをお探しなんですね。指輪のサイズはご存知ですか?」
「サイズ?あー…測ってねぇかも」
「でしたら一度測られてきたほうが…」
「アイツの指のサイズか…」
マイキーは指輪を見た。
「あ、その指輪と同じサイズだ」
「それ…確かですか?」
「オレが彼女の指のサイズ間違うはずねーじゃん。めちゃくちゃ触ってんだから」
「でしたら…こちらのシルバーリングは如何ですか?」
ショーケースの中から銀色に輝く綺麗なペアリングを台座から外し、手袋を嵌めた掌に乗せてマイキーに見せる。
「なんかすげー高そうなんだけど…」
「実際は高いです。中学生ではとても買えない程のお値段です」
「じゃあ何で勧めたの?」
「ただし!!条件を満たしていれば万単位のお値段からグッと値引きされてペアで六千円という破綻価格なんです!!」
「マジで!?超激安じゃん!」
あまりの安さにマイキーも驚き、中学生でも買える値段だと知って目がキラキラと輝いている。
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