第34章 記憶から消えた君
隣町のショッピングモールに一人で訪れたマイキーは二階にあるジュエリーショップに立ち寄り、カノトの誕生日に贈るプレゼントを選んでいた。
「(ん〜正直どれがいいのか分かんねぇな。どれもアイツに似合うモンばっかだし。)」
ショーケースの中には指輪やイヤリング、ブレスレットにネックレスが並べられている。マイキーは難しい顔で数十分、ずっとしかめっ面で悩んでいた。
「(女物って難しいな…。エマに聞くか?あーでも…誕プレはオレが選んで買った物をアイツに身に付けてもらいてぇし…)」
色んなアクセサリーを身につけたカノトを想像するマイキー。
「(でも…突き返される…かも。)」
『今のオマエと話したくない』
「(はぁぁぁ〜〜……言い過ぎた。絶対傷付けた。泣きそうな顔してたし。どうしよう…マジで嫌われたかも…)」
帰ろうとするカノトを引き留めたのはいいが話を全く聞いてくれない事に腹を立て、つい冷たい態度で突き放した。
マイキーはショックで落ち込み、無意識に溜息を洩らす。
「(そう言えばあの後、同じパンケーキが来たな。カノが頼んだって言ってたっけ。マドカさんに使うはずのクーポン、使ってくれたんだろうな…)」
携帯を取り出し、受信ボックスを開く。
「(【頼んでくれたパンケーキと私のせいでお二人を不快な気持ちにさせて本当にすみませんでした。】か…。)」
別れてからしばらくすると謝罪のメールが届いていた。いつもなら絵文字の一つでもあるのに送られてきたメールの文章には一切の絵文字は使われていない。
マイキーは眉を八の字に下げ、消えない罪悪感と後悔に苛まれていた。
「(アイツが妙に苛立ってたからついオレもカッとなってキレて冷たい態度とっちまった。海凪に揉めた理由聞いても"アタシが悪い"の一点張りで教えてくんねぇし…カノに聞こうにも喧嘩した後じゃ気まずい。)」
マイキーは弱々しい溜息を吐く。
「(カノのバカ。オレはもうオマエしか見てねぇのに。本気でオマエだけに惚れてんのに…オレと海凪の関係ばかり気にしやがって。)」
今度は眉間を寄せ、むっと顔をしかめた。
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