第34章 記憶から消えた君
《そ…そお?俺別に大したこと言ってないような気がすんだけど…》
褒められたタケミチは満更でもなさそうな声で"ふへへ"と笑った。
「仲直り…できるといいな」
《絶対できる!》
「うん、ありがとう。なんだかタケミチくんに話したら少し気分がスッキリしたよ」
《おーそれは良かった。…って、もうこんな時間!やべえ!》
「?そんなに焦ってどうしたの?」
《実はこれからヒナとデートなんだ!それまでヒマだったからカノちゃんに相手してもらおうと思ってたんだけど時間ギリ!》
電話の向こうで何やら慌ただしい音が聞こえる。
「そっか、デートなんだ」
《お互いに変な意地の張り合いしないで早く仲直りしろよ!》
「わかってはいるんだけど…」
《もう少しでお前の誕生日だろ?それまでにマイキー君と話し合え!誕生日をぼっちで過ごすのは悲しいだろ?》
「私の誕生日よく覚えてたね」
《毎年俺に奢らせる奴は誰だよ…》
「あはは」
《こっちはいつも金欠なのに『タケミチくん!私今日誕生日なの!だからご飯奢って!お肉がいいな!お寿司もいいな!それともお肉とお寿司のフルコースいっちゃう!?』とか何とか言って高い店に連れて行かれるし!》
泣きながら怒るタケミチに苦笑する。
「ちゃんと手加減してあげてるでしょ。足りない分は私が払ってるし。それにタケミチくんの誕生日には私が好きなの奢ってあげてるじゃん」
《高級焼肉店最高だったな〜。回らない寿司もすげぇ美味かったし。マジであの時のカノちゃん神に見えた。》
「今は神じゃないのー?」
《うーん…神より"勇者"だな!》
「!ふふ、そっか。神様よりそっちの方がいいや」
《じゃあそろそろ切るな!》
「話聞いてくれてありがとね。ヒナちゃんとのデート楽しんで」
タケミチとの通話を終え、携帯を閉じる。
「…誕生日。その日までに仲直りして、マイキーくんとたくさん思い出を作りたいな」
切なげに微笑む。
「あとで電話してみようかな…」
気まずさはあるが時間が経つほど顔を合わせづらくなるし、謝り難くもなる。
「(ちゃんと話し合おう!)」
そう心に決め、早速掃除に取り掛かった。
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