第33章 すれ違い、こじれ始める。
苛立ちが抑えられず、勢いよく椅子から立ち上がった。その時に体がテーブルに当たった衝撃で端っこに置いてあったパンケーキのお皿が地面に落下し、大きな音を立てる。
「え、何?ケンカ?」
「痴情のもつれ?」
「うわ、彼氏めっちゃ美人顔」
「でもなんか女の方怒ってねぇ?」
「あー…パンケーキが崩れてグチャグチャになっちゃってるよ」
周りの人達が驚いたように二人を見ていた。
「……宮村心叶都。」
「!」
「アンタ…最低だわ」
静かに怒りを向ける海凪はギロッと睨み付け、席を立ち、原形が崩れたパンケーキを素手で拾い集める。
「(違う…私は…海凪ちゃんと喧嘩したかったわけじゃ…ただ不安で…どうしたらいいのか分からなくて…それで…)」
「───なんの騒ぎだ?」
「!マイキーくん…」
トイレから戻ってきたマイキーが目の前で起きている状況に驚いた顔を浮かべている。
「あ!パンケーキ!どうしたんだよそれ!?グチャグチャに潰れてんじゃん!」
「そいつが落としたのよ」
「カノが?」
「あ……」
「…一応聞く。何があった?」
「……………」
「カノ、黙ってちゃ分かんねぇだろ。それとせっかく海凪が頼んでくれたパンケーキ落っことして謝りもしねえで突っ立ってんなよ。コイツ一人に片付けさせんな」
「!」
怒った顔のマイキーが海凪の横に腰を下ろし、片付けるのを手伝う。
「海凪、手クリームまみれじゃん。あとはオレがやっとくから洗ってこいよ」
「ううん、大丈夫。アタシが端っこに置いたのが悪い。それより万次郎こそ手が汚れるわよ」
「オレは男だから汚れてもいいんだよ。けどオマエは女だろ。手だって綺麗にしてるじゃん。ごめんな、せっかく頼んでくれたのに台無しにしちまって。食べるの楽しみにしてたんだろ?」
「また頼めばいいわよ」
海凪はマイキーの気遣いに小さく笑う。その様子を見たカノトがショックを受けたような顔で悲しげに目を伏せ、胸辺りをギュッと掴む。
「カノ、海凪に謝れ」
「っ…………」
マイキーの怒りを宿した目が向けられる。
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