第33章 すれ違い、こじれ始める。
「随分と嬉しそうな顔で話すのね。はぁ…アンタが万次郎のことを本気で好きだってことは分かった」
海凪は深い溜息を吐いてカノトを見る。
「だからアンタが万次郎に想いを告げる前にアタシがアンタに万次郎のことを諦めさせる」
「え?」
海凪の冷たい瞳が突き刺さる。
「つ、告げないですよ想いなんて!」
「いいえ、アンタは必ず万次郎に自分の想いを告げるわ。見てて分かるもの。フラれる覚悟でアンタは万次郎に好きだって伝える」
「何で碓氷さんに僕のことが分かるんです。貴女は僕のことを良く知らないですよね?」
「知らないけど何でか分かるの。上手く説明できないけど…女の勘ってやつ?」
「…マイキーくんに何も迷惑は掛けてません。想うことすら駄目だと言うんですか?」
「アンタの存在が万次郎の幸せを壊す可能性があるからよ」
「は?」
「万次郎は今幸せなの。大好きな恋人と一緒に一歩ずつ前に進んでる。アタシは万次郎の幸せを守りたい」
"だから…"と海凪は言葉を促す。
「お願い。万次郎を諦めて。アタシはもうアイツが何かを喪うのを見たくない。大好きだった兄と幼馴染みまで失って…アンタのせいで万次郎が恋人まで失うことになったら…」
「……………」
「アタシは万次郎を不幸にしたアンタを一生許せない。だからお願いよ。万次郎の幸せを願うなら、潔く身を引いてほしいの」
「(私が…マイキーくんの幸せを壊す?)」
違う 私は彼の幸せを守るの
未来で闇堕ちした彼を何度も見てきた
夢の中で会った彼に何度も殺されかけた
"幸せじゃない世界"に取り残された彼を
"幸せな世界"で生きさせてあげたい
マイキーくんだけが幸せじゃないなんて
そんなの悲しすぎる
だから私が彼の幸せを守る
絶対に独りでいることに慣れさせない
今度こそ二人で幸せになるために
私が手を離しちゃダメなんだ
彼が迷子にならないように
『帰る場所』を見失わないように
私が光となって
"正しい道"に
マイキーくんを導くんだから───……
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