第33章 すれ違い、こじれ始める。
「オレ、トイレ行ってくるから先に二人で食べてていいよ」
海凪と入れ替わるようにマイキーが席を立ち、テラスを出て行った。
「「……………」」
マイキーがいたから会話が繋がったが、その場に残された二人は先程の件もあり、少し気まずい空気が流れていた。
「(なにか話さないと…)」
「食べないの?」
「あ…じゃあ頂きます」
お皿を自分の前に持ってきて、ナイフとフォークを使ってパンケーキを切ろうとする。
「アンタってさ、万次郎のこと好きでしょ」
「ふぇ!?」
手がピタッと止まる。
「な…何を急に…!」
「分かりやすい反応」
「…好きじゃないですよ」
「嘘ね。さっきのアンタ見てたら万次郎が好きだって言ってるような反応ばかりだった」
「僕、男ですよ?」
「男でも同性に惹かれることだってあるわ。けど万次郎を好きになっても無駄よ」
「どういう意味ですか…?」
「アイツには恋人がいる。それもベタ惚れする程の溺愛っぷりの彼女がね。だからいくらアンタが想ってても万次郎の心は奪えないわ」
「そんなの分かってますよ。彼に恋人がいることくらい。でも想うだけなら誰の迷惑も掛けないでしょう?」
「一生振り向かない相手をいつまでも想ってても虚しいだけ。そんな辛い思いをするならとっとと新しい恋を探した方がいいわ」
海凪は周りの人達に目を遣りながら言う。
「辛くないです…例えマイキーくんに想い人がいたとしても…簡単に諦められないです」
その想い人は自分だけど
今は男装中だ
"マイキーくんに想いを寄せてる男"
その設定で話を合わせるしかない
「アンタみたいなイケメンなら女の子達が放っておかないでしょ。それなのに何で万次郎がいいの?」
「マイキーくんは…とても優しい人です。喧嘩はもちろん強くて、仲間の為に命を張れるカッコイイ人です。それでいて甘いものが好きで、ちょっと子供っぽくて、我儘で、困ることも多いけど…僕のヒーローなんです」
「ヒーロー?」
「ピンチになると必ず駆け付けてくれる。僕がどこにいても絶対に見つけ出してくれる。助けを求めたら守りにきてくれる最高のヒーローです」
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