第33章 すれ違い、こじれ始める。
「いや…でも…」
「オレの我儘聞いてくんなきゃヤダ」
テーブルに肘を立ててその手で顔を支え、頬を膨らませてそっぽを向いて拗ねるマイキーの我儘にカノトは仕方ないなというように短い息を吐いた。
「…一回だけですよ」
「!」
「キスしたら機嫌直してくださいね」
「マジで?してくれんの?」
「…しないですか」
「するっ!」
上機嫌でニコニコ笑うマイキーはメニュー表でカノトの顔も隠す。
「はい、ちゅーして」
「……………」
「早くしねぇと周りにバレちゃうよ?」
「分かってますよ…」
いざとなったら恥ずかしさが襲い、キスできないでいるとマイキーがクスッと笑う。
「はーやーくー」
「…マイキーくん」
「ん?」
「好きですよ」
「うん。オレも好き、カノ。」
目元を緩ませて嬉しそうに笑うマイキーに顔を近づけ、ちゅっと唇を重ねた。
「機嫌…直りました?」
「もっかいしてくれたら直る♪」
「調子に乗らないでください」
「ちぇっ」
マイキーは口を尖らせた。
「碓氷さん、遅いですね」
「混んでんじゃね?」
「(兄さんのケーキは帰りに買おう。)」
「それよりさ、昨日の電話。途中で終わっちまって旅行の日にち決められなかっただろ?」
「!」
「あの時言いかけた『私の…』の言葉の続き、あれ何を言いかけたんだ?」
「…私の誕生日の日に行きませんか?」
「カノの誕生日?」
「温泉にゆっくり浸かって部屋で二人きりでマイキーくんにお祝いしてほしいなって」
「それってさ…あの約束、叶えていいってことだよな?」
「え?」
「誕生日にオマエの全部をオレにくれるっていう約束。まさか忘れてないよな?」
「ちゃんと…覚えてますよ。だから私の誕生日と重なるように旅行も決めたんです」
「顔、赤いけど?」
「っ…………」
「ふはっ、ほんと恥ずかしがり屋だな。照れてオレの顔見れないところがグッとくる」
「何言ってるんですか…」
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