第33章 すれ違い、こじれ始める。
「散歩感覚みたいなものです」
どこか弱々しく笑うカノトにマイキーは何かに気づいたように尋ねる。
「なんかヤなことあった?」
「え?どうしてですか?」
「今日は元気ねぇなって。喋る声もいつもの感じと違ぇし、無理して笑ってんのバレバレ」
「!」
「何でそんなに弱ってんの?」
理不尽な大人達を相手にして心身共に疲れ切っていた。心配掛けさせないように無理して振舞っていたのがバレ、カノトは驚いた表情を浮かべる。
「…大したことじゃないんです。今日は朝から兄と一緒に実家に帰っていて、それで少し疲れてるだけなんです。久しぶりに帰ると学校生活はどうだーとか勉強はちゃんとしてるのかーとか…とにかく小言がうるさくて」
嘘と本音を混ぜて誤魔化す。
「子供にうるさく言うのはどこの親もみんな同じだと思うわ」
「うちの場合はエマがうっせぇけどな」
「エマがうるさく言うのは万次郎が学校サボったり、授業中寝てたりするからでしょ」
「退屈なんだからしゃーねーだろ。給食以外は起きてる意味ねーもん」
「ケンちゃんの苦労が目に見えるわ…」
「アハハ…」
"どこの親も同じ"…か
カノトは悲しげに目を伏せる。
「元気がないならアンタの分も奢ってあげるわよ」
「え?」
「海凪太っ腹♪良かったなカノ!コイツが奢るのなんてレアだぞレア!オレの時は自腹で払えとか言いやがったからな!」
「ちょっと、アタシだって奢る時くらいあるわよ。珍獣みたく言わないでくれる?それにあれは万次郎が悪いんでしょ」
「だから謝っただろ。オレだってあんなの本気にしてねーって。軽いジョーダン。」
「(二人にしか分からない会話をしている…マイキーくんが海凪ちゃんに笑いかけてるのを見ると…胸の奥がザワってなる。)」
「カノ、まだこの後時間あるだろ?そこのテラスでジュースでも飲もうよ」
「あ、はい…。でも奢ってもらうのは流石に…僕は大丈夫なのでマイキーくん達の分だけ奢ってあげてください」
「一人奢るのも一緒よ。そうやって遠慮されると返ってアタシに失礼だわ。素直に奢られてればいいのよ」
少しキツい海凪の言い方がグサリと突き刺さる。
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