第33章 すれ違い、こじれ始める。
「(せっかくだし兄さんに買って帰ろ♪)」
ご機嫌そうに笑い、駅前のケーキ屋に向かう。雑誌に載るだけあって混み具合が心配だったが、着いてみると意外と空いていた。
「いらっしゃいませー!」
「(わぁ、いろんな種類があって美味しそう。しかも外にはテラス席もあって、ここで買ったケーキをそのままテラスで食べられるんだ。)」
ショーケースの中にはたくさんの種類のケーキが並んでいた。それはまるで宝石のようだった。カノトは目をキラキラと輝かせる。
「どれにしよう…選ぶのが楽しくなる」
兄さんは何がいいかな
ショートケーキもいいけど
こっちのチーズケーキも美味しそう
「(そうだ。新作のケーキとかないかな。)」
「いらっしゃいませー!」
悩んでいると後ろの自動ドアが開いた音がした。
「あれ?カノ?」
「!」
名前を呼ばれ振り返る。
「マイキーく…!」
偶然にもマイキーに会えたことに喜ぶカノトだったが、その隣には海凪の姿もあり、彼女を見た途端、嬉しかったカノトの顔がピシッと固まる。
「(え…?どうして海凪ちゃんが…)」
「こんなとこで会うなんて奇遇じゃん♪」
「あ…お二人は…ケーキを買いに?」
「海凪が奢ってくれるって言うから来た」
「佐野家に泊まらせてもらったお礼にね」
「(昨日泊まったんだ…。だから二人で一緒に来たってわけ…。)」
ズキッと胸が痛む感覚がした。
「カノもケーキ買いに来たのか?」
「僕のじゃなくて兄の分を買いに。ここに来る前にティッシュ配りの人にこのお店で使える無料券を頂いたので」
「えーいいなー。オレも貰えば良かった。ケーキのタダ券なんて滅多にねーし」
「それだとアタシが奢る意味がなくなるじゃない」
「海凪にも奢ってもらって、タダ券も貰って二個買う!」
「欲張り過ぎだわ」
呆れるように溜息を吐いた。
「カノは自分の分買わねぇの?」
「今日はそんなに手持ちがないんですよ。ちょっと気晴らしのつもりでこっち方面に来ただけなので」
「気晴らし?」
マイキーは不思議そうな顔を浮かべる。
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