第33章 すれ違い、こじれ始める。
「ハハ…他の奴にも言われたな。あいつに向ける愛は重いって。オレの愛は狂ってるってさ。けど…オレ達はそれでいいんだ。重いくらいが丁度いい」
「…ねぇ、さっきの。自分の恋人をどこかに閉じ込めたいとか本気で思ってないわよね?」
「本気で思ってたら何か問題があるのか?」
「…万次郎。アンタが彼女のことを凄く大事に思ってるのは分かる。けど間違っても、本気で閉じ込めたいなんて思っちゃ駄目よ」
「…何で?」
「アンタの身勝手な都合でその子のこれからの自由を奪うことになるからよ。万次郎の愛は…多分間違った方に傾くと思う」
「…そんなの分かってる。でも…それでもアイツは言ったんだ。オレの愛が狂ってても構わないって。好きな人から与えられる愛なら欲しいって、言ってくれたんだよ」
『狂った愛でもオマエは欲しいって思うのか?』
『だって好きな人から与えられる愛だから』
「だからオレ達は"どんな形であれ"、その愛を拒絶して捨てることはねぇ」
海凪は二人の歪な関係に気付いていたが敢えて口には出さずに溜息を吐いた。
「…まぁアタシがアンタ達の色恋に余計なお節介を焼く必要はないわね。でも万次郎、あまり彼女の嫌がることはしちゃ駄目よ」
「嫌がることって?」
「必要以上にベタベタするとか」
「んー…オレの彼女照れ屋だから嫌がるフリしてるだけなんだよ。ツンが多めでさ。ギュッて抱き着くとめちゃくちゃ恥ずかしがんの。離れて〜って言うんだけど照れ隠しって知ってるから離れてやれない♪」
「サラッと惚気ないでくれる?」
「羨ましいだろ〜」
「別に羨ましくなんてないけど」
「なぁ、オレの可愛い彼女の写メ見る?待ち受けにしてんだ〜♥」
「見ないから」
「え…めっちゃ可愛いんだって。もうすげー可愛いの。天使かよって思うくらい可愛すぎるからマジで見て」
「ハイハイ。万次郎の彼女がものすごーく可愛過ぎるのはもう知ってるわよ。それで充分。というかバス時間平気?」
海凪にあしらわれ残念そうな顔を浮かべるマイキーは時計を確認する。
「あーそろそろ出ねぇと乗り遅れっかも」
「なら早く支度して行きましょう。エマの部屋から上着取って来るわ」
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