第33章 すれ違い、こじれ始める。
「相変わらず素直じゃねーな」
「万次郎こそ相変わらず意地が悪いわね」
海凪は呆れるように溜息を吐く。
「迷子防止の為にオレが付き合ってやるって言ってんの。それに海凪に奢ってもらえるなんてラッキーじゃん♪」
「…やっぱり万次郎だけは自腹で払ってもらおうかしら」
「はぁ!?ズリィぞ海凪!!何でオレだけ自腹なんだよ!!納得いかねー!!」
「意地悪言う人には奢らないわ」
「あんなの冗談に決まってんだろ!流石に15にもなって迷子になるなんて本気で思ってねーって!」
「ふふ、冗談よ。ちゃんと万次郎の分も奢ってあげるわ」
焦るマイキーを見て満足したのか、海凪は可笑しそうにクスッと笑った。
「じゃあ行きましょうか」
「バスって何分に来んの?」
「バスで行くの?」
「ウン」
「バブに乗って行った方が早いけど」
「それはそうなんだけどさ…」
「?」
「オレの後ろ、もう彼女しか乗せねーことに決めてんだ」
「え?彼女…?」
マイキーの口から出た意外な言葉に海凪は驚きを隠せず、呆けた表情でマイキーを見る。
「万次郎、彼女いるの?」
「いる。世界一可愛い彼女。」
「大絶賛ね。そんなに可愛いの?」
「もうすげー可愛い。めちゃくちゃ可愛い。何しても可愛いし、生きてるだけで可愛い」
「ベタ惚れじゃない」
「いやほんとマジで可愛すぎてヤバいんだって。誰の目にも触れさせないように何処かに閉じ込めて、オレだけしか見えなくさせて、ずっとオレだけしか愛せなくなればいいと思ってる」
「…流石に愛が重すぎて引くわ」
自分の知らないマイキーの一面を見てしまった海凪は本気で引いている。
「ていうか万次郎に彼女ができるなんて意外。驚き過ぎて一瞬フリーズしたわ」
「意外ってどういう意味だよ」
「だって万次郎の彼女になるって大変よ?アンタは自由人だし絶対に振り回される。それに着いていける彼女がこの世に存在するなんて」
「オマエまじで失礼だな…」
「可愛いってベタ惚れするくらいなんだもの。アンタ、その子のこと相当大好きでしょ?」
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