第33章 すれ違い、こじれ始める。
「万次郎、このお店の場所知ってる?」
「あ?ドコ?」
「このページに載ってるお店」
ソファーに寝転びながら漫画を読んでいたマイキーの部屋を海凪が訪ねた。エマから借りた雑誌のページを開き、スイーツ特集と書かれたページをマイキーに見せる。
「あー多分駅前。前に通りかかった時、すげぇ行列出来てた気がする」
「やっぱり人気店なのね」
「何?ここ行きてぇの?」
「昨日泊めてくれたお礼がしたくて。万次郎もエマも甘いもの好きだったわよね?」
「好きだけど…別に泊めたくらいで礼なんていいって。帰るオマエを強引に引き留めたのはエマなんだし」
"は!?帰る!?ダメダメ!!"
"こんな夜遅くに女の子が一人で外を歩くなんて危険!今日は泊まって行って!!"
迷惑が掛かるから帰ろうとする海凪を無理やり引き留め、昨日は佐野家に泊まらせた。
「嬉しかったの」
「ん?」
「突然いなくなったアタシが急に帰って来ても万次郎もエマも昔みたいに歓迎してくれたでしょ?それが凄く嬉しかった。だからお礼をさせてほしいの」
「……………」
マイキーは読んでいた漫画を閉じてソファーから起き上がると壁に掛けてある上着をハンガーから外して羽織った。
「仕方ねぇから連れてってやるよ」
「付き合ってくれるの?」
「オマエ一人を行かせて昔みたいに迷子になられても困るからな」
「子供じゃないんだから迷子になんかならないわよ」
「ガキの頃はよくなってただろ。オレ達とはぐれて道の真ん中で蹲って泣いてたじゃん」
「あ、あれは…!!」
揶揄うようにニヤリと笑うマイキーに子供の頃の恥ずかしい思い出を暴露され、海凪は頬を赤く染める。
「…よく覚えてるわね」
「普段はしっかりしてンのに、オレやエマがいなくなると急に心細くなって泣くじゃん。あれは忘れたくても忘れらんねーよ」
「是非とも忘れてほしいわ」
「えー無理♪」
マイキーはニコッと笑う。
「流石にアタシだって成長したわよ。あの頃みたいに迷子になっただけで泣かなくなったわ」
「泣いたらオレ達がまた慰めてやろーか?」
「だから子供じゃないってば」
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