第33章 すれ違い、こじれ始める。
「(冗談じゃない。私がこの先もずっと一緒にいたいと思うのはマイキーくんだけ。それ以外の男と結婚なんて…死んでもお断り!!)」
「…父さん。何で何も言わないんだよ。アンタの父親が自分の娘を会った事もない男と無理やり結婚させようとしてんだぞ」
「………………」
「さっきから傍観してばっかで話に加わりもしねえ。なぁ、止めてくれよ。アンタまでカノをまたこの家に縛り付けるのかよ」
「尚登様がお決めになったことだ。お前もいい加減理解しなさい」
「何だよそれ…。自分の娘を守ろうともしねえのかよ。コイツが嫌だっつってんのに!アンタは庇う気すらねえのかよ!?」
「無駄だよ兄さん。この人は私を守ったりしない。庇う気すらないと思うよ」
「カノ……」
「この人に何かを求めても何もしてくれないよ。子供の頃からそうだったでしょう?」
零夜の方を見ずにカノトは淡々と口にする。マドカは小さく舌打ちをした。零夜はマドカに似た緑色の瞳でカノトを見る。
「何で母さんはアンタと結婚したんだろうな」
「……………」
「はぁ…帰るぞカノ。これ以上ここにいたら頭に血が昇りそうだ。つーかムカつき過ぎて暴れそう」
頭をガシガシと掻き、マドカは立ち上がる。
「なんだ、もう帰ってしまうのか」
「二度と戻るかこんな家」
苛立つように吐き捨てマドカが先に部屋を出る。
「儂が決めた相手が見つかるまでは自由に過ごして構わん。だが長くはないぞ。既にもう何人かに目星は付けてある。次にお前を呼ぶ時は結婚相手が決まった時だ」
カノトは顔をしかめ、鋭い眼光で尚登をキツく睨みつけた後、部屋を出て行った。
「(ホント腹立つ。絶対にあの人達の思い通りにはならない。だって私は彼と幸せになりたいんだもの。マイキーくんとじゃなきゃ幸せになりたくない。)」
何故か涙が溢れそうだった。悔しさからなのか、悲しさからなのかは分からない。でも泣くのをグッと堪え、我慢した。
「(二人で一緒に幸せになるって、約束したんだから。)」
それなのにどうして
あの人達はそれを邪魔するの?
「(あぁ…また、囚われる───。)」
虚ろな目を宿し、心の中で呟いた。
.