第1章 タイムリープ
「(中学生の私!?)」
あまりの驚きに口がぽかんと開き、自分の姿に唖然とする。ゴソッとポケットを漁ると二つに折り畳まれた携帯が出てきた。
「ガラゲーとか懐かしい」
パカッと携帯を開く。
「!!」
2005年 7月4日!?
「今が2017年の7月4日だから…」
12年前の今日!!?
「夢にしてはリアル過ぎる…」
とりあえず駅を出ることにした。
「これが夢ならもしかすると…」
新宿から別の駅に乗り換え、そこから徒歩でカノはある場所へと向かう。
「やっぱり同じだ」
日も落ち、街頭の灯りだけが夜道の怖さを少しだけ和らいでくれる。
「ここだ…」
現実と同じ、住んでいるマンションに着くと、エレベーターで4階まで昇り、表札を見ながら部屋を確認する。
そして一つの扉の前で止まり、震える手でインターホンを押した。
《はい…?》
「っ…………」
懐かしい声がインターホンから聞こえた瞬間、カノは息を飲む。
《どちら様ですか?》
「…ただいま───兄さん。」
《カノ?》
「(あぁ…兄さんの声だ。私の名前を呼ぶ、優しい声。)」
ガチャッ
扉が開かれると、一人の男性が現れる。名前は宮村望。カノの最愛の兄である。
「何でインターホンなんか鳴らすんだ?家の鍵、持ってるだろ?」
「うん……」
じわりと目頭が熱くなる。
「兄さん…だよね?」
「何を言い出すかと思えば…」
カノのおかしな質問にマドカは短い溜息を吐いた。
「俺はお前の兄貴だよ。宮村望!そしてお前は俺の大事な妹で宮村心叶!」
「(あれ?)」
突然視界がぼやけると、目から溢れた何かが頬を伝い、地面にポタッと落ちた。
「え!?急にどうした!?」
ポロポロと涙を流すカノに驚いたマドカはオロオロし出す。
「うっ…うぅっ…兄さん、兄さん…!!」
「うん、お前の兄さんだよ。ほら、大丈夫。ちゃんと傍にいるって」
よしよしと頭を優しく撫で、マドカはカノを慰める。
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