第1章 タイムリープ
「高校を卒業してオマエから実は女の子だって告白された時のオレの驚き様ときたら…」
「あはは、そんなこともあったねぇ。あの時のタケミチくんの顔、今でも覚えてるよ。目が飛び出そうなほど驚いてて、すっごい不細工だったもん」
「誰が不細工じゃ」
「ふふ」
「…なぁ、カノちゃん」
「んー?」
「…オレ、どこで間違えたんだろうな?」
その瞬間、タケミチの体が突き飛ばされたように前のめりに押し出された。
突然の事に思考が追いつかず、驚いたカノの視界からタケミチが消える。
「え?」
咄嗟に線路に顔を向ける。
「っ、タケミチくん───!!!」
線路に落ちたタケミチのすぐ目の前まで電車が音を立てて迫った。
チリンー…
その時、カノの頭の中で鈴の音が鳴り、意識が途切れた…。
✤ ✤ ✤
「ちょっと兄ちゃん!そんな前のめりになったら線路に落っこちるぞ!」
「え……?」
視界が開ければ、線路ギリギリに立っていて、慌てた男性が落ちないようにカノの腕を掴んでいた。
「ったく…危ないだろ!気をつけな!」
「す、すみません…」
ビシッと指先を突きつけ、男性は去って行った。その場に残されたカノは放心していたが…
「そうだ!タケミチくんが…!」
線路を見るも落ちたはずのタケミチはいなかった。
「…あれ?見間違え?でも確かに線路に落ちたところに電車が迫ってたんだけど…」
訳が分からなくて混乱する。
「(タケミチくんどこ行ったんだろう…?)」
そこで何かに気付いたカノは驚いた顔でピシッと固まる。
「(そういえばあの男の人…さっき私のこと“兄ちゃん”って呼んでた気が…)」
『ちょっと“兄ちゃん”!そんな前のめりになったら線路に落っこちるぞ!』
ドクンッ
「(鏡……)」
冷や汗が止まらない。嫌な予感を覚えつつ、階段を下り、等身大の鏡を見つける。
カノは自分の姿を鏡に映した───。
「え…?この格好…」
背中まで伸びた髪は短く切られ、着ていた服もワンピースから当時通っていた中学の学ランに変わり、掛けているはずの眼鏡もなかった。
.