第33章 すれ違い、こじれ始める。
「望、心叶。お前達が昔から儂の事を忌み嫌っているのは知っている。今日も来ないつもりだったのだろう?」
「……………」
「"賢明な判断"だ。もしお前達が"二人共"来なければ儂が許さなかった」
「「!」」
途端、ピリッと空気が張りつめた。
「儂は悲しいぞ。可愛い孫に憎まれているなんて。儂はこんなにもお前達のことが…大好きで大嫌いだというのに」
「てめぇも俺達のことが嫌いなんじゃねぇか。つーか可愛いとかぜってー思ってねぇだろ」
「儂は孫全員を可愛いと思っている。だがお前達が儂と仲直りするつもりがないというなら仕方ない」
「………?」
「儂はお前達がこの家に戻って来ると言うまではとことん意地悪してやることに決めた!」
「え?」
「…何企んでやがる」
「そう殺気立つな望よ。今日は大事な話をする為にお前達二人を呼び出したのだ」
「大事な話…?」
苛立つマドカに尚登はニコリと笑う。
「(おじい様のあの笑み…凄く嫌な予感がする。私達に意地悪するってなに?どうして胸騒ぎが収まらないの…?)」
不安そうにカノトはマイキーから貰ったネックレスを服の上からギュッと握る。
「心叶」
「!はい…?」
マドカに向けられていた視線がカノトに移る。
「お前は有咲に似てとても美人に育った。あの娘も『高嶺の花』などと呼ばれていたが、お前はそれ以上の花を咲かせてくれた」
「…何が言いたいんです?」
「そんなお前ももう14だ。勉学に励むのもいいが恋を知る歳でもある。」
ドクンッ
まだ何も告げられていないのに心臓が嫌な音を立てた。紫の瞳が不安げに揺れる。
「そこでだ」
尚登は意地の悪そうな顔でニヤリと笑い、カノトに告げた。
「優しいこの儂がお前の"結婚相手"を探してやることにした!」
「………は?」
「はぁ!?結婚相手!?」
急な事に素っ頓狂な声を上げるマドカと驚きの余り、目を見開いたまま呆然とするカノト。
零夜は何も言わずに無言を貫いている。
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