第33章 すれ違い、こじれ始める。
「あ?今のどういう意味だ?」
「ん?」
「ちょっと兄さん…っ」
平気な顔で悪意を吐き散らす尚登の言葉にマドカがピキッと青筋を浮かべる。慌てたカノトがガチギレするマドカを止めようと腕を掴む。
「止めんなカノ。流石に妹を侮辱されて黙ってられるか。お前だって今傷付いただろ。だったらちゃんと怒れ。それが"正解"なんだから」
「!」
マドカに指摘され、掴んでいた腕を離す。
「(そうだ…確かに今傷付いた。反論する気もないからスルーしようとした。でも…兄さんが怒ってくれた。傷付いたならちゃんと怒れと。"怒ること"が正解なんだと。)」
カノトはグッと掌を握り締める。
「…なんだ望。怒っているのか?儂はお前の妹を侮辱したつもりはないぞ。ただ本当のことを言っただけだろう?」
先程までニコニコと笑っていた顔から一切の表情を消し、威圧的な雰囲気を纏わせ冷たい眼差しをマドカに向ける。
「それが侮辱してるっつってんだよ。相変わらず平気な顔で悪意を吐き散らすクソじじいだな。コイツを限界まで追い詰めたのは誰だと思ってやがる」
「ほぅ…?随分と生意気に育ったな。昔は利口で儂らの言うことにも逆らわず従順だったのに…あの頃のお前はどこにいった?」
胡座を掻いた膝の上に肘を立て、手の甲に頬を押し当て、マドカをじっと見つめる尚登。
「あんなのてめぇらのご機嫌を取る為に猫被ってただけだっつーの。元々俺はこんなだ。どうだ?宮村家に相応しくねえ人間で幻滅したか?クソじじい。」
ハッと鼻で笑うマドカの軽蔑する目に尚登は面白そうにふと笑う。
「"零夜"」
「はい」
「お前の息子は面白く育ったな。まさか自分の孫に"クソじじい"と言われる日が来ようとは」
「…申し訳ありません」
「謝ってほしいわけじゃない。それにこのくらい生意気な方が儂も退屈せずに済む。ただ口の悪さは天下一品だがな」
「てめぇのクソみたいな性格ほどじゃねえよ」
「ふはは!言うようになったな望!孫達の中でお前が一番の悪ガキだぞ!」
何が面白いのか尚登は豪快に笑う。マドカはチッと舌打ちをし、カノトは沈んだ表情で目を伏せている。
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